角田光代さんの作品との出会い
初めて読んだ角田光代さんの作品は「彼女のこんだて帖」でした。
なんとも不思議な出会いだったな、と今でもはっきりそのときのことを覚えています。
たまに行く市内の図書館で、ふと目に留まった本でした。
料理本やレシピ本のエリアに並んでいたので、レシピ本かな?と思いページをめくってみると、短編小説と、作中に登場する料理のレシピで構成された本だったのです。
なんだか面白そう!と思い、読んでみることにしました。
彼女の文章に引き込まれ、あっという間に読み切ってしまうと同時に、「もっとこの人の書いた作品を読んでみたい」という思いが強くなりました。
書店で売っている作品を手あたり次第に買って読んでみると、どれも大変に面白いのです。
そして、過去の作品は取り寄せて読んでしまうほどのハマりっぷり。
一気に何冊読んだだろう?というほどにハマったのが今から10年くらい前のこと。
以上が、角田光代さんの書かれた作品との出会いでした。
そこからは新刊が出るたび、わくわくしながら読むようになりました。
あの日、図書館内で、レシピ本が並ぶ一角に立たなければ、彼女の作品とは出会っていなかったかもしれないと思うと、今でも不思議な気持ちになります。
決して広くはない図書館でした。
蔵書があったのもラッキーだったように思います。
前置きが長くなりました。
今回読んだ「大好きな町に用がある」は2019年2月に発売された、27篇からなる旅のエッセイ集。
SWITCHという雑誌での連載を書籍化した一冊になります。
角田光代著「大好きな町に用がある」の感想
「大好きな町に用がある」は、角田光代さんが訪れた国内外の旅先での出来事や、旅にまつわる思い出を記したエッセイ集。
ひとり旅をはじめて20年以上、訪れた国の数は40以上だといいます。
24歳の時のタイ旅行がきっかけとなり、旅好きになったとのことです。
旅ノートをつけていると言いますが、さすが作家さん、という感じがしました。
確かに彼女の小説には、海外の描写が多く出る印象がありますね。
個人的に印象に残ったのは「夏の家族旅行」です。
仕事で滞在することになった、とある地で、夏休みの観光客たちに遭遇し、自身の幼少期の思い出が蘇るというエピソード。
幼少期、夏に家族旅行に行くことの意味、長い年月の後にそこから学んだこと…。
この目線や分析は思いつきもしなかったので、はっとさせられました。
親への感情の推移が描かれており、思わず読み返してしまいました。
ああ、親ってありがたい…と、珍しくおセンチに。
あとがきには、休暇でも仕事でも、旅の醍醐味を見つけることができ、それは変わらないものだというようなことが書かれてありました。
決して旅好きではない私ですが(笑)、旅もいいわねーと少し心が揺れ動きました。
また彼女曰く、その場所が好きかどうかではなく、縁や相性もあると感じる、と。
ほうほう、これは覚えておこう!と。
最後に
以前、角田さんがラジオ番組に出演なさったときに語っていたエピソードと重なる部分もあり、改めてそのときの録音を聴いてみました。
J-WAVEの番組で、ロングインタビューに答える放送回でした。
初めての海外旅行でタイに長期旅行したときのこと、7歳で小説家になろうと思ったこと、好きな作家のこと、お母さまとのことなど。
忙しくてなかなか旅行に行けないともおっしゃっていました。
大好きな作家のひとりである、角田光代さん。
冒頭にも書いた通り「彼女のこんだて帖」というレシピ本と短編小説の、ちょっと変わったコラボレーション作品からのファンです。
その後、小説にはまり、エッセイでも楽しませてもらっています。
小説が面白かったから、エッセイも読んでみよう!と思って読んでみたものの、あれ?となったり、エッセイが面白かったから小説も、と読んでみたらあれれ?となる場合もあるので(←あくまでも、個人的な意見です)、改めてすごい人だなあ、と。
トトちゃん(角田さんが飼っている猫ちゃん)がものすごくかわいくて、いつか私も猫と暮らしてみたいなあ、なんて夢見てます。