まつりパンライフ

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宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」あらすじと感想

宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」表紙

 

宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」について

宮部みゆきさんの「昨日がなければ明日もない」は、2018年の11月に文藝春秋社から発売された本で、初出は「オール讀物」。

単行本化にあたり加筆したとのこと。

 

杉村三郎が主人公となって活躍するシリーズもので、この作品が5弾目。

ドラマ化されており、小泉孝太郎さんが演じておられました。

 

本作品は「絶対零度」、「華燭」、そして表題作「昨日がなければ明日もない」の3篇を収録。約400ページ。

ジャンルはミステリー(になるのかな?)。

 

3本の中篇、各あらすじと感想を記しておこうと思います。

共通して登場する人物の紹介を少しだけ。

 

  • 杉村三郎 主人公。離婚し、探偵事務所を開業。元妻と暮らす一人娘、桃子がいる。
  • 竹中松子 資産家の大家の妻。子供が5人いる主婦。
  • 竹中冬馬 竹中家の三男(末っ子)で美大生。
  • 蛎殻昴 オフィス蛎殻(かきがら)の所長。
  • 木田光彦 27歳。オフィス蛎殻のウェブ担当調査員。

 

それぞれの作品での登場人物は、その都度紹介していきます。

 

「絶対零度」のあらすじと感想

主な登場人物

筥崎静子 埼玉県在住の主婦。依頼人。

佐々優美 27歳。静子の娘。自殺未遂をして入院中というが、連絡がとれない。

佐々知貴 26歳。優美の夫。広告代理店勤務。

筥崎毅 24歳。静子の息子。転勤で北九州にいる。

 

絶対零度のあらすじと感想

依頼人の静子は「自殺未遂をして入院している娘の行方が…」と杉村探偵事務所に相談に来た。

面会はおろか、本人からの電話やメール等の連絡も一切なしだという。

三郎は優美の行方を追い奔走する、というお話。

 

この話の結末は非常に後味が悪いと思った。

友人関係を当たるうちに優美が見つかり、実家に戻って終わり、かと思えばその後の展開がなんともおぞましい。

体育会系特有のルールが悪い形で出てしまったのだろうか?という印象。

 

宮部みゆき著「杉村三郎シリーズ」第5弾の背表紙

 

「華燭」のあらすじと感想

 主な登場人物

小崎加奈 清栄学園に通う中学2年生。

小崎佐貴子 加奈の母親。50歳。

宮前佐江子 佐貴子の妹。45歳。

宮前靜香 佐江子の娘。24歳。清栄学園の職員。佐貴子の姪で、加奈のいとこ。

 

華燭のあらすじと感想

三郎は小崎佐貴子から、姪の靜香の結婚式に出て欲しいと依頼される。

絶縁した妹の娘ゆえに出席したくないのだが、娘の加奈が出たいというので付き添って欲しいという。

竹中松子と三郎と加奈の3人で式場へ向かうことになったが、トラブルが待ち受けていた…というお話。

 

結婚式という華やかな舞台ですが、この手の話はありそうです。

どろどろの展開。

 

最後に明かされる靜香の思惑は、分からないでもないというのが私の感想。

もう一人登場する花嫁の背景には驚愕。

 

佐貴子と佐江子の絶縁の理由が衝撃的すぎました。

加奈の心情を思うと複雑。

因果応報…なんとなく背筋が伸びるような結末ですが、この章だけは希望があるなと思いました。

 

「昨日がなければ明日もない」のあらすじと感想

主な登場人物

竹中有紗 竹中松子の孫。中学1年生。

朽田漣 有紗の元同級生。

朽田美姫 漣の母で29歳。

朽田三恵 美姫の妹。

鵜野一哉 美姫の元夫。会社員。

鵜野竜聖 美姫と一哉の子。6歳。里親に引き取られて暮らしている。

串本憲章 美姫の現在の彼でトラック運転手。31歳。

 

昨日がなければ明日もないのあらすじと感想

いわゆるモンスターペアレントの朽田美姫はシングルマザーで、漣と暮らしている。

美姫は「竜聖が殺されそうだから調べてほしい」と三郎に調査を依頼してきたが、話を聞いてみると美姫の目的は…というお話。

 

宮部さんは嫌な人物の描写がうまいなあ!と改めて思いました。

美姫のような自己中心的な人物像は、周囲の常識人の中ではひと際目立ちます。

 

一度は手放した息子をだしに使い、賠償金を欲しがる美姫の非常識さ、短絡的で無責任な考え方は理解に苦しみます。

周囲のごくごく常識を持ち合わせた人たちによって調査は終わり、かと思われたのですが、ここで終わらないところがすごい。

 

杉村三郎の今後を心配してしまうような終わり方。

最後に立科警部補が三郎にかけた言葉に、大きくうなずきました。

 

宮部みゆき氏新作の裏表紙

最後に

杉村三郎シリーズ、好きなんです。

楽しみにしていたシリーズ第5弾も面白かった、という感想。

 

彼が探偵になる経緯や、元妻の菜穂子とのいきさつが気になる方は、本作を読み終えてから過去のシリーズを読んでも十分に楽しめると思いますのでぜひ。

 

食いしん坊なので、どうしても食事のシーンが印象に残ります。

侘助のホットサンドが美味しそう、だとか竹中家のクリームシチューとおでんが美味しそう、だとか。

 

それと、初登場の立科警部補の存在が気になります。

今後も登場しそうな予感。

 

娘の桃子と三郎の関係性も微笑ましくて、今後の展開が楽しみです。

 

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先日、「宮部みゆき全一冊」を読んだばかりなので、積読本の中から彼女の作品をチョイスしてみました。