北村薫「スキップ」は再読におすすめの一冊
実家を離れることになったとき、ほとんどの本は自分の部屋に置いてきました。
しかし、手元に置いておきたいと思った本や、再読したいと思った何冊かの本だけは神奈川の地へ連れてきました。
その中の一冊が、今日紹介する北村薫さんの「スキップ」です。
10年以上前、ブログを通じて知り合った方におすすめされた一冊が「スキップ」でした。
この「スキップ」をきっかけに、北村薫さんの本を読むようになったと記憶しています。
先日読んだ「宮部みゆき全一冊」の中で、宮部さんと北村薫さんの対談が掲載されており、久しぶりに彼の作品を読んでみたくなったのです。
はじめて「スキップ」を読んだときの感想はハッキリ覚えていないというのが正直なところなのですが・笑、この人の書いた本をもっと読んでみたいなと思ったのだけは確かです。
その後「鷺と雪」で直木賞を受賞すると、以前にも増して北村さんの作品を目にするようになりました。(本作品も直木賞候補作。)
「スキップ」「ターン」「リセット」は時と人・三部作と言われていて、本作品が一作目です。
全て手元にあるため、機会があれば「ターン」と「リセット」の感想もまとめたいと思います。
北村薫「スキップ」のあらすじ
主人公の一ノ瀬真理子は、千葉に暮らす17歳の高校二年生。
帰宅後の昼寝から目を覚ますと、そこは25年後だった。
真理子は、夫と高校二年生の娘・美也子と共に、埼玉で暮らす高校教師という立場になっていた。
真理子は42歳の「桜木真理子」として生きていくことに。
平成7年(1995年) 新潮社より刊行。
北村薫「スキップ」感想
「スキップ」は、読む年代や立場によって違った味わい方ができるのかなという印象です。
初めて読んだのは、一ノ瀬真理子(17歳・スキップする前)の年齢に近い頃でした。
当時の私は、42歳というのははるか遠くの年齢であり、ピンとこなかっただろうと思います。
しかし今、そのピンとこなかった年齢に近づいてきました!
17歳の真理子が、いきなり42歳からの「桜木真理子」として生きていくのは、かなり苛酷な状況です。
その間の選択をスキップしての25年後ですから。
当たり前だった両親との暮らしや、学校生活が送れなくなるという現実。
それに加え自分と同じ年齢の子供がいて、夫がいて、という現実の重さ。
また、国語教師になっていた真理子は、17歳の中身のままに仕事をこなしていくのですが、これは少々ハラハラ。
しかし、前向きな真理子の姿に勇気をもらえました。
事情を理解した夫と娘の、真理子に寄り添う様子も良かったです。
突然「17歳から今までの記憶がない」なんて言われたら面食らいますよね。
娘・美也子の、ちょっとクールで的確な助言にも注目して読み進めて欲しいです。
何度でも楽しめる作品だと思います。
若い世代の人たちにも、真理子がこれから歩んでいく世代の人たちにもおすすめです。
結末はぜひ読んで確認してもらいたのですが、この作品は、結末よりも真理子の心情や「今を生きること」を考えるきっかけになる本じゃないかなと思いました。
やっぱり北村さんの作品はいいなあ。
文章というか文体?が丁寧で好きなんですよね。
最後に
この本は私好みだから読み返そう、と思ってから、10年くらい経過してしまいました~・汗。
「スキップ」がどこかにあったはず、と本棚に目をやると、懐かしい八文字屋書店のカバーを発見しました。
八文字屋書店は仙台市にある書店で、学校帰りや会社帰りによく立ち寄っていたお店です。
この本を再読するきっかけとなった「宮部みゆき全一冊」の記事がこちらです。
お時間があれば、ぜひ。