角田光代「いきたくないのに出かけていく」について
角田光代さんの「いきたくないのに出かけていく」は、スイッチ・パブリッシングから2019年6月に発売された旅のエッセイ集です。
雑誌SWITCH内の「オリオリ」に連載されていたものを書籍化したもの。
(雑誌の連載は2017年1月号から2019年4月号まで。)
全部で28本のエッセイが収録されています。
以前、こちらの記事でも紹介した「大好きな町に用がある」の第2弾。
角田光代「いきたくないのに出かけていく」の感想
著者が若い頃に経験したという貧乏旅行や、忙しい今でも行うという弾丸旅行。
どちらの経験もない私ですが、角田さんの旅行記を読むのは大好き。
トラベルエッセイは、行った気になれる、行ったことがある土地の新たな魅力が見つかる、などの理由で読むことが多かったのですが、最近は著者の視点がどこに向いているか?に注目して読むようになりました。
描写が正確であるだとか、有名な観光地・知る人ぞ知る観光地の紹介も魅力的ではあるのですが、そういう情報は本来ガイドブックで得るものですよね。
(今頃気が付いたかのよ、とつっこまれそうですが。)
そういった点では、訪れた土地の場所うんぬんではなく、そこから感じ取った何かや、そのときならではのエピソードを楽しめるようになったのは良かったな、と。
タイトルの「いきたくないのに出かけていく」は、初めの方に載っている、インドへの旅について書かれた章の表題。
表題作だけあって、という言い方はおかしいかもしれませんが、この章がとても良かった。
正確には、ここから3回分インドについてのエッセイが続きます。
表題の通り、インドへの旅を避けてきたという著者。
今までインドを避けてきた理由、そして旅することになった経緯、実際に訪れてみての感想が実に興味深かったです。
避けてきた理由は、私も共感できました。
わかるわかる、コワいしそりゃあ避けるでしょう!と。
それに続くインドの旅行記を読み…仏教とヒンズー教の聖地の神秘さ・熱気が伝わってきたし多くの人を魅了する何かがあるのだろうとは理解できました。
しかし「価値観が変わる」らしいインドは、やっぱりコワい…笑。
台湾の居酒屋事情を読み「のんべえに生まれたかったかったわ!」と思ったり・笑、最近書かれたエッセイなので、世界各地の今、がわかります。
数十年後に読むと「ああ、昔、この国はこんなだったのね」となるのでしょうね。もちろん、変わらない部分もあるのでしょうけど。
著者が続けているというランニング。
趣味ではなく、苦行だ(!)というランニング。
マラソン大会に出場するため、国内だけでなく海外にも行くのだというからすごい。
時に起こるハプニングも乗り越え、完走する著者の逞しさ!こちらも読んで欲しい章です。
最後に
角田さんが書く日常のエッセイも好きだけど、旅のエッセイも面白くて好きなんです。
日常の先にありそうだけど、やっぱり非日常で。
視点や観点も独特だし、事象の書き方が秀逸だなと感じました。
旅慣れているからか?フットワークが軽い。
いきなり登山に行っちゃうとか、行動力あるな~。
そして、その場その場を楽しむことができる。
真似しようとかは無理な話なので、こういったことを心掛けるだけでも違うんだろうなという気がします。
175ページと、それほど厚い本ではありませんからさらっと読めます。
記事をアップするために読み返しているところですが、後半の章が心に響きます。