まつりパンライフ

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桐野夏生「とめどなく囁く」のあらすじと感想

桐野夏生著「とめどなく囁く」の背表紙

 

桐野夏生「とめどなく囁く」の登場人物

今回紹介するのは、桐野夏生さんが書かれた「とめどなく囁く」という長編小説です。

2017~2018年に新聞の朝刊に連載されたもの。

 

2019年3月に幻冬舎より出版。全445ページ。

 

主な登場人物を書き出してみます。

 

  • 塩崎早樹 元夫が行方不明になり、再婚。41歳。
  • 塩崎克典 早樹の夫、72歳。妻を亡くし、早樹と再婚。資産家。

 

  • 加野庸介 早樹の元夫。海で行方不明になり、死亡認定された。
  • 加野菊美 庸介の母。
  • 木村美波 早樹の同級生で弁護士。気が強く、気難しい。

 

  • 塩崎智典 塩崎家の長男、46歳。息子が2人。
  • 塩崎優子 智典の妻、41歳。
  • 塩崎亜矢 塩崎家の長女、44歳。神戸に嫁ぐ。
  • 塩崎真矢 塩崎家の次女、41歳。税理士事務所勤務で独身。

 

  • 小山田潤 庸介の学生時代の友達で、釣り仲間。
  • 丹呉陽一郎 庸介の友達で、釣り仲間。出版社勤務。
  • 佐藤幹太 庸介の友達。釣り雑誌の元編集部員。

 

実際はもっと登場するのですが、このあたりにとどめておきます。

 

桐野夏生さん「とめどなく囁く」の裏表紙

 

桐野夏生「とめどなく囁く」のあらすじ

あらすじを簡単にまとめてみます。

 

主人公の早樹は夫を海難事故で亡くす。

海釣りに出かけたきり戻って来なかったのだ。

 

悲しみを乗り越え、資産家(ゲームソフト会社の会長)の夫と再婚して湘南の高級住宅地で穏やかに暮らす。

 

夫の克典は病気で妻を亡くし、31年下の早樹と再婚。

会社の経営は長男に譲り、早樹との暮らしを優先した生活を送りながら趣味の庭づくりを生きがいとする。

 

そんな中、亡くなったはずの元夫・庸介の目撃情報が早樹のもとに複数の寄せられる。

無言電話までかかってくるという。

 

早樹は複雑な思いを抱えたまま、真実を追う。

 

桐野夏生「とめどなく囁く」の感想

この「とめどなく囁く」は新聞(朝刊)の連載ということでしたが、最終回を待ち遠しく感じた人もいたのではないかと思います。

 

というのも、ミステリーの要素もあったからです。

 

私は話の結末を先に知りたいタイプなので、いつものように途中まで読み進めたところで結末を読んでしまいました!

(それでも面白かったです。)

 

早樹と克典、再婚同士の二人は互いを思いやりながら生活しているのですが、主人公の早樹の中に芽生える、とまどいや反発する気持ちの動きには共感できる部分がありました。

 

はたから見れば羨むような暮らしでも、当人からすれば窮屈な思いもあるでしょうし。

 

早樹は、克典の前妻の子供たちと同世代。

そちらの付き合いもあるわけで、読んでいるだけで頭が痛くなりそうな設定ではありますが、早樹はうまくやっています。賢い女性です。

 

物語の核となるのは前の夫である庸介の生死なのですが、これがなかなか…!

せっかちな人は一晩で読んでしまうような展開です。

 

庸介の母が、なかなかの存在感を見せつけてくれます。これは厄介。

 

海で行方不明になったとはいえ、遺体が見つかったわけでもないのでとまどう周囲と早樹の失望。

 

折りに触れ今の夫と庸介を比較してしまうのは、仕方のないことのように思います。(お互い様でしょうね。)

 

新聞連載作品・とめどなく囁く

 

私は、夫の克典が贅を尽くして楽しんでいる庭造りの描写が好きでした。

 

広大な敷地で、季節の植物や花を愛でる暮らしにどこか憧れを抱いているからかもしれません。

しかし庭師が定期的に来るとはいえ、本人が手入れをしなければ維持は難しいとなると私には無理ですね、あはは。

 

桐野夏生著「とめどなく囁く」表紙

 

こちらが表紙なのですが、読む前は何やらおどろおどろしいデザインだなと思いました。

 

読み終えてから改めてこの表紙を眺めてみると、描かれている蛇にもちゃんと意味があったのだと理解できます。

こういう発見も面白いですね。

 

この作品の登場人物は物事をはっきり言う人が多くて、胸がすくような場面が多かったです。

 

最後に

桐野さんの作品を読むのは「路上のX」ぶりになります。

 

www.matsuripan.com

 

こちらは、あらすじや感想などをまとめた記事です。

 

学生時代から桐野さんの作品が好きで、読んでいました。

 

友人から「OUT」がすごい、と言われたので読んでみたら度肝を抜かれたという事がありました。

ついこの間のようですが、もうあれは何年前だろうか。