「NHK国際放送が選んだ日本の名作」について
「NHK国際放送が選んだ日本の名作」は2019年7月に双葉文庫から出版された本で、8人の作家による短編集。
収録されている短編は、世界で聴かれているラジオ番組「NHKワールドジャパン」で放送されたもの。
- 朝井リョウ「清水課長の二重線」
- 石田衣良「旅する本」
- 小川洋子「愛されすぎた白鳥」
- 角田光代「鍋セット」
- 坂木司「迷子」「物件案内」
- 重松清「バスに乗って」
- 東直子「マッサージ」「日記」
- 宮下奈都「アンデスの声」
収録されているのは上記の10作品で、いずれも過去(2007年~2016年)に刊行されている。
こういったアンソロジー作品は久々でした。
新刊の検索で「角田光代」と検索したらヒットしたのがこちらの本だったので、手に取った次第です。
一番の目的は角田光代さんの作品を読むことだったのですが、読んだことのある作品でした。
でもいいのです。
良い作品は何度読んでも心に刺さります。
「NHK国際放送が選んだ日本の名作」の感想
「NHK国際放送が選んだ日本の名作」の中で、特に印象に残った作品の感想を記しておこうと思います。
角田光代さんの「鍋セット」
大学進学を機に上京することになった娘に母が鍋セットをプレゼントするという話。
10代後半特有の、母親に対する苛立ちや恥ずかしいような思いが描かれていて懐かしささえ覚えました。
一方で、寂しくて心細いという心理描写も細やかに描かれていて、やっぱり角田光代さんの作品好きだわ、という結論・笑。
作中の調理方法がやけに具体的で、この人料理するの好きなんだろうなあ、などと勝手に想像したりしました。
重松清「バスに乗って」
重松清さんの作品は、昔よく読みました。
「バスに乗って」は、小学5年生の主人公が入院中の母親をバスに乗って見舞いに行くという話です。
小学生の頃の気持ちなんて、とうに忘れてしまった!なんて思って読んでいました。
しかし途中からは分かるなあ、そうだったなあ、なんて思わせてくれるからすごい。
そういえば重松清さんは、子供の気持ちを描くのが上手な作家さんだったな、と記憶しています。
坂木司「物件案内」
坂木司さんの作品も久々です。
「物件案内」の主人公は、離婚直後の孤独な女性。
物件を探す彼女が出会ったのは、審美眼のある不動産屋。
この不動産屋との出会いにより思わぬ方向に話が進んでいきます。
ちょっと不思議で、いい話。
その他
石田衣良さんの「旅する本」は、絵本を読んでいるような気持ちになりました。
小川洋子さんの「愛されすぎた白鳥」は、寓話のようなストーリー。
最後はギョッとしましたが、結構好きです。
林真理子「マリコを止めるな!」について
林真理子さんの「マリコを止めるな!」は、2018年~2019年に週刊文春に連載されていたものを書籍化し、2019年3月に文藝春秋から発売されたエッセイ集。
全254ページ。
林さんのエッセイは、ananに連載されているものをまとめた「美女入門シリーズ」ばかり読む傾向にあるのですが、今回は装丁が目に留まったので手に取りました。
こちらが「マリコを止めるな!」の装丁です。
文春等の週刊誌は、読む習慣があまりないためになんとなく敬遠していたのですが、それは大きな間違いでした。
林さんの文章ってリズムがあって読みやすいんですよね。
こういうセンスって素晴らしいですよね。天性のものなのかな。
美女入門シリーズでは美容ネタが多い印象ですが、割と真面目なことも書かれてあり、考えさせられる章も多かったです。
「週刊文春」と「anan」の読者層を考えて題材を選ぶのでしょうね。
でも、彼女の華やかな交友関係については、共通して楽しめます。
2018年に起きた不倫報道、エンジン01の活動報告、皇室のあれこれ、街の本屋さんの生き残り、等々。
笑ってしまったのが、「どうやったら本が好きになりますか」という質問に彼女が答えた内容。
「ものを食べながら、読めばいいんじゃない」
いやあ、斬新すぎる・笑。私は思いつかないです。
以前紹介した「愉楽にて」についても触れられている箇所があり、そんな取材をしていたのかと興味深かったです。
まとめ
1冊目に紹介した「NHK国際放送が選んだ日本の名作 (双葉文庫) 」はラジオで放送された作品をまとめたもの。
素敵な話が多くて、重松清さんや小川洋子さんなど、最近読んでないなという作家の方々の作品に触れられて良かったです。
私はラジオが好きで普段から聴いているのですが、どういうわけか物語を耳から聴くのが苦手なんです。昔から。
自分のペースで読解していかないと気が済まないのか、声色からの情報が苦手なのか、理解するスピードが遅いのか…?謎です。
いずれにしても、今回の短編集を活字で読めたのは良かったなと思います。
「マリコを止めるな!」は、美女入門シリーズしか読んだことがないという私のような読者にも読んでみて欲しい一冊です。笑えます。