伊坂幸太郎「シーソーモンスター」について
伊坂幸太郎著「シーソーモンスター」は、2019年4月に中央公論新社から発売された本。
収録作品は「シーソーモンスター」と「スピンモンスター」の中編小説2本。
初出は文芸誌「小説BOC」の1号~10号(2016年4月~2018年7月)。
※書籍化にあたって加筆・修正したとのこと。
全429ページ。
本作品は「螺旋プロジェクト」の一冊。
螺旋プロジェクトとは、8組の作家の競作企画。
巻末には「螺旋」の年表あり。
伊坂幸太郎「シーソーモンスター」のあらすじと感想
登場人物
北山直人 製薬会社勤務
北山宮子 直人の妻
北山セツ 直人の母
綿貫 直人の会社の先輩
あらすじ
ときは昭和の終わり。
北山直人は、妻・宮子と母・セツとの嫁姑問題に悩んでいた。
父の死後、3人で暮らすことになったのだが双方の不満がたえず、板挟みの状況であるという。
一方の宮子は、義母であるセツに不信感を抱くようになる。
感想
直人が嫁姑問題の愚痴を綿貫に聴いてもらう、というやりとりから話が始まるのですが、やっぱり伊坂幸太郎さんの作品は会話の部分が面白いなという感想です。
決して他の部分がイマイチというのではなく、個人的に面白いと感じる箇所が「会話」だという話です。
テンポが良いのはもちろんですが、なるほどな~と思わず頷いてしまうのです。
もはや格言(?)と言ってもいいような言い回しもたくさん出てきますし、クスッとしてしまうシャレも好きなんですよね。
嫁姑問題に関してはノーコメントを貫きたいと思いますが・笑、 不満が出てくるのは当然(!)。離れて暮らしましょう。
「シーソーモンスター」では直人と宮子が、交互に語り手になります。
直人の父親の死に関して不審に思う点がある宮子。
宮子の前職(直人は知らない)には驚きましたが、その設定が面白くてすっかり物語にハマってしまいました。伊坂さん、この手の話、得意ですよね。
前回読んだのがイヤミス(←他の作家さんの作品)だったためか、結末がなんとなくホッとする感じで良かったです◎
後半の「スピンモンスター」も面白かったのですが、ストーリー的にはこちらの「シーソーモンスター」の方が好みでした。
2年くらい前に放送されていた、綾瀬はるかちゃん主演のドラマ「奥様は、取り扱い注意」を思い出してしまったのは私だけでしょうか?
伊坂幸太郎「スピンモンスター」のあらすじと感想
登場人物
水戸直正 配達人
檜山景虎 捜査員
中尊寺敦 首謀者ではと疑われる人物
あらすじ
ときは2050年。
水戸直正は新幹線の車内で「中尊寺敦に手紙を届けてほしい」と封筒を渡され、いわば巻き込まれる形で、追われる身になってしまう。
水戸と檜山は小学生の時に同じ事故で家族を亡くしており、敵対視している関係である。
感想
さてこちらの「スピンモンスター」は、作中に仙台市内の描写があり、それだけで舞い上がってしまう感じが否めません・笑。
学生時代を過ごした街が、作中に地名や名所が出てくると嬉しいものです。
語り手は木戸と檜山。
独立した中編かと思いきや、ここで繋がっていたのか!!
という仕掛けになっているのが良かったです。
2050年の日本、どうなっているのでしょうね。
作中にあるように、人工知能が今よりも進化しているのは間違いないだろうなと思いました。
ちょっとついていけない設定の部分もあったのですが、そこはまあ2050年の世界だという事で、、。
-やはり、争いはなくならないのですね。
最後に
螺旋プロジェクトの一冊ということで身構えていたのですが、他の作品を読まずとも十分に楽しめました。
全ての作品を読むと隠されたなにかがあるとのこと。
斬新な企画だと思いますし、他の作品も気になるところではあります。
仙台市在住の伊坂幸太郎さん。
伊坂さんの作品は、仙台が舞台になっているものが多々ありますよね。
映画化された作品に関してもロケ地が仙台だったりと、嬉しい限りです。
今回のスピンモンスターもそうですが、地元が出てくると懐かしい気持ちになります。
久しぶりに仙台の友人達にも会いたいなあ。