月村了衛「欺す衆生」の主な登場人物
月村了衛さんの「欺す衆生」は2019年8月に新潮社から発売された長編小説。
「欺す衆生」の読み方は「だますしゅじょう」です。
全504ページ。
初出は「週刊新潮」(2017年10月~2018年11月)。
※単行本化にあたり加筆修正したとのこと。
この作品を知るきっかけとなったのは、またしてもラジオ番組。
今まで月村さんの本を読んだことがなく、ラジオ番組内で紹介されていなければ、このタイミングで手に取ることはなかったと思います。
どうしても、自分のお気に入りの作家さんの本ばかり読んでしまいがちに。
書籍は安い買い物ではありませんし、購入したからにはきちんと読み切らねばという謎の使命感が・笑。
そういうわけで、本選びはつい慎重になってしまいます。
そんな中、すっかりおなじみとなった(?)ニッポン放送で放送中の中瀬ゆかりさんの「ブックソムリエ」で紹介された小説は間違いなくヒットなのです。
今のところ。
このブログで紹介している「初めまして」の作家さんのほとんどは、中瀬さんの推薦によるものです。
今回の月村さんの作品に関しても、結論から言うとヒットでした。
分類としては犯罪小説ですね。
あらすじと感想の前に、主な登場人物の紹介です。
隠岐隆 主人公。横田商事の元セールスマン。
隠岐淑子 隆の妻。
隠岐美穂 隆の長女。
隠岐結花 隆の次女。
因幡充 横田商事の元総務。
蒲生 暴力団のフロント企業・神泉興産の代表取締役。
砂州 神泉興産の社員・運転手。
尾瀬 調査会社の調査員。
聡美 自称・元消費者金融勤務。
月村了衛「欺す衆生」のあらすじ
昭和の終わり、横田商事の会長が殺された。
横田商事は悪質な詐欺を働いて収益をあげた会社だった-。
横田商事で働いた過去を持つ主人公・隠岐隆は、同じく元横田商事の因幡に声を掛けられ、半ば強引に詐欺に加担させられる。
渋々ながらも因幡の下で動いていた隠岐だが、妻や娘たちの生活を守るため懸命に利益をあげていく。
次々と人々を欺く、隠岐の行く末はーといったあらすじ。
中瀬さんによると、この小説は戦後最大の詐欺事件と言われている「豊田商事事件」がモデルになっているとのこと。
月村了衛「欺す衆生」の感想
中瀬さんの言う通り、すっごくおもしろかった!という感想ですね。
不動産詐欺といった、なんとなく想像がつく詐欺から、現物まがい商法(ペーパー商法)、和牛商法、原野商法、といった耳なじみのない手口も登場。
これらの詐欺がどういう手口で、だます側としてどのようにターゲットを絞り込んで「落とす」のかが分かりました。
よくもまあ次々と新しい手法の詐欺を考えつくものだな、と。
因幡のいい様に扱われているかと思った隠岐の立場の変化-。
裏切者-。
想像以上の面白さが待っていました。
ヤクザと手を組むようになってからは、血なまぐさいシーンも出てきます。
意外な展開が待ち受けていて、504ページという長編ながら中だるみも感じませんでした。
隠岐がターゲットにするのは、いわゆる弱者ではなく欲にまみれた富裕層ばかり。
詐欺に対して免疫がついたかも、という感じはありますが、私のような庶民にはあまり関係がないかもしれないですね。
隠岐の家族、特に娘たちの人物描写も良かった。巧いなあ、と。
詐欺を働く一方、隠岐の父性も感じとることができました。
最後に
月村了衛さんの作品は、今まで読んだことがありませんでした。
SFや時代小説、そしてミステリーなど幅広い分野の小説を執筆している方のようですね。
書店で名前を見かけたことはあったのですが、手に取る機会がなく今まで過ごしてきました。
思い返せば、あれだけ目立つ箇所に陳列してあったということは読者も多く、自信をもって売り出せる作品だということだったのでしょう。
紹介してくれた中瀬さんに、感謝です。
読了後、小説のモデルとなった豊田商事事件が気になり、少し調べてみました。
小説の冒頭部分にあったような会長の刺殺事件が、本当にあったんですね。
1985年のことだそうです。