小川糸「ライオンのおやつ」の登場人物
小川糸著「ライオンのおやつ」は、2019年10月にポプラ社から発売された長編小説。
全255ページ。
わたしは本を読んで泣いた経験がないと言いますか、いわゆる感動作と言われるジャンルの小説を避けているようなところがあるんです。
本を読んでいるときくらいは悲しい思いをしたくない、というのが理由なのですが、あえて泣ける本を読む方もいらっしゃるようですね。
結論としては、感動作ではあるのですが、読んでよかった!と思います。
日課にしている書店でのパトロールで、この本よく見るな~とは感じていたのですが、手書きのポップに書かれた「感動作」というワードに強い拒否反応。
しかし地元の書店だけではなく、あちらこちらの大型書店でもおすすめ本として並んでいたため、読んでみることにしたのです。
結果的に泣いてしまったのですが、たまには人の推薦を素直に受け止め、感動作であろうとも(!)読んでみるものですね。
あらすじと感想に前に、主な登場人物の紹介から。
- 海野雫 ホスピスで余生を送る主人公。33歳。
- マドンナ ホスピス「ライオンの家」の代表。看護師。
- 狩野姉妹 姉のシマと妹の舞。「ライオンの家」の調理担当。
- 田陽地 タヒチ君。 島に移住してワイン作りを行う若者。
小川糸「ライオンのおやつ」のあらすじ
主人公の海野雫は余命宣告を受けた後、瀬戸内の島にあるホスピス「ライオンの家」で、残りの人生を過ごすことを決めた。
かつてレモンが栽培されていたというこの島は「レモン島」と呼ばれ、どこへ行っても海がみえる温暖な地。
ライオンの家では週に一度、ゲストのリクエストに応えた「思い出のおやつ」が出される。
雫は自らの死と、どう向き合うのか。
また、リクエストしたメニューを前にしたとき、何を思うのかー。
小川糸「ライオンのおやつ」の感想
「ライオンのおやつ」は、久々に読む小川糸さんの作品。
主人公の雫と自分の年代がそう遠くはないということからも、共感できるかも?なんて思いましたが、死を目前にした彼女が思い悩んだであろう葛藤を感じるにつれ、共感しようなどとは思わずに読もうと思いました。
ホスピス・ライオンの家で雫が過ごした日々は穏やかなものでしたが、そこでの回想シーンはなかなか辛辣に映りました。
六花という犬と出会い、共に過ごせた雫は本当に幸せそうでした。
犬を飼っているとこういうことがあるよね、みたいな場面がたくさん出てきます。
小川さん、犬を飼われているのかな?
育った境遇(雫は、幼い頃に両親を事故で亡くしています)も複雑ですが、30代で余命を宣告されるというのはどういう気持ちなのでしょう。
育ての父よりも早く逝ってしまうと知ったときの心中を思うとやりきれませんよね。
治療したにもかかわらず、効果が出なかった雫の思いは、はかり知れないものがあったのだろうと感じました。
料理の描写がリアルで、ちょっとアレンジのきいたメニューが登場するのもツボでした。
レモン風味のおいなりさんとか、フルーツ粥とか。
マドンナがライオンの家というホスピスをはじめた理由や、メイド服を身に着けている理由も、感慨深いものがありました。「ライオン」の由来にも納得です。
ゲストたちとのふれあいを通し、人生の機微に触れたような気がします。
タヒチ君とのデート場面はちょっと胸キュン(←もう古い?)でした。
最後に
不覚にも(?)、本を読んで泣いてしまうという…。
寝る直前に泣いてしまったため、翌朝は目が腫れておりました。
私も泣くんだ…な~んて、自分でもびっくり・笑。
この作品は、泣けるとか泣けないとかではなく、ライオンの家のゲストたちを通して自分を見つめ直したり、周囲の人たちへ感謝するきっかけを作ってくれました。
※もちろん、本を読んで泣きたいという人にもおすすめです。