伊坂幸太郎「フーガはユーガ」について
伊坂幸太郎著「フーガはユーガ」は2018年11月に実業之日本社から発売された、書き下ろしの長編小説。
全283ページ。
おととし書店で見つけ、手に取った一冊です。
ミステリアスな装幀と、帯の文言が購入の決め手になりました。
また、書店員さんが手書きしたと思われる店頭のポップも、印象が良かったのです◎
2019年・本屋大賞ノミネート作品。
今回も備忘録として、あらすじと感想を記録しておこうと思います。
ネタバレなし、の方向でいきます。
伊坂幸太郎「フーガはユーガ」の登場人物・内容・あらすじ
以下、主な登場人物の紹介を簡単に。
常盤優我(ユーガ) 物語の語り手。風我の双子の兄。
常盤風我(フーガ) 優我の双子の弟。
高杉 制作プロダクション勤務の20代・男性。優我が話を語る相手。
ワタボコリ 常盤兄弟の同級生。
岩窟おばさん リサイクルショップの店主。
小玉 風我の恋人。
ハルコ 優我のバイト先の客。未亡人。
ハルタ ハルコの息子。小学生。
他にも登場人物はいるのですが、きりがないのでこの辺りで。
続いて内容・あらすじの紹介をしたいのですが、秘密ということらしいです。
作者の方針なのか?出版社の方針なのか?は不明ですが、出版元のサイトを見た限りでは、あまり余計なことは言ってくれるな、というような気配が感じられました。
ただ、双子、瞬間移動、というワードはOKのようですね。
ネタバレにならない程度に、内容について少しだけ説明をするとしたらー
仙台市内のファミレスで、双子の兄・優我が幼い頃からの話を高杉という男性相手に語る、という流れで物語が進んでいきます。
SFの要素もあり、ミステリーの要素もある不思議な話でした。
伊坂幸太郎「フーガはユーガ」の感想
物語の鍵を握る「アレ」が起こることによって切り抜けられた、常盤兄弟、あるいはその周囲のいくつもの修羅場。
悪ふざけだった、で済まされない場面は目を背けたくなりますし、息をのまずにはいられませんでした。正直、つらい…。
子供の世界でも大人の世界でも、本質的には変わらないのかな、というネガティブな感想…。
それでも、常盤兄弟は強い。
知恵を出し合い、切り抜けていく力強さがあった。
しかしながらラストシーンは、力が抜けました。
高杉…!
そうだったのか、と。
裏表紙の文字を見て、相変わらずシャレてるなという感想を持ったのは私だけではないはず。(と思いたい。)
伊坂さんの作品の楽しみ方として、仙台市内の地名が出てくることも挙げられると思います。(縁もゆかりもない人にとっては、なんのこっちゃ!でしょうけど。)
今回も懐かしい地名が出てきて、嬉しくなりました。
むかーし、待ち合わせ場所として使った勾当台公園、学生時代に花見をした榴岡公園、友達が住んでいた愛子駅、など。
市内ではありませんが、学生時代の夏休みに皆で行った菖蒲田海岸でのシーンは、やけに臨場感がありました。
その場所を離れたからこそ、思い出が美化されるのかなとも思います。
伊坂さんの小説でのもう一つの楽しみは、場面が変わるところで使われる絵文字?記号?スタンプ?(←うまく説明できない)がちょっと変わっていますよね。
今回作中で使用されているスタンプに関しても、なるほど!あれをもってきたのね!と一人で勝手に興奮・笑。確認してみて下さい。
最後に
双子が登場する小説には時々遭遇しますが、主人公となると…
あまり記憶に残っていません。
常盤兄弟が幼少期から20代までの話なので、比較的若い読者にとっても響くものがあるんじゃないかなと思いました。
私自身の10代の頃の読書経験を振り返ると、主人公の年代があまりにもかけ離れていると、理解するのに時間がかかったり、いまいち話が入ってこないな、ということがありました。
この点に関して言うと、年月を重ねると解消される部分も大きいです。
人生経験がないうちは戸惑いながら読むのも新鮮だったな、と今になって思ったりします。