まつりパンライフ

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奥田英朗「無理」あらすじと感想

奥田英朗著「無理」表紙

 

奥田英朗「無理」の登場人物

奥田英朗著「無理(上下巻・文庫版)」は2012年6月に文藝春秋から発売された長編小説。

単行本としては2009年9月に刊行。

 

上巻362ページ、下巻358ページ。

 

奥田英朗さんの少し前の作品になります。

 

「最悪」に続き、こちらも面白かったので備忘録がてら、あらすじ・感想をまとめます。

 

まずは主な登場人物の紹介です。

 

  • 相原友則 ゆめの市役所勤務の32歳。バツイチ。
  • 久保史恵 17歳の受験生。友達と共に上京を目指す。
  • 加藤裕也 訪問販売のセールスマン。元暴走族。23歳。
  • 堀部妙子 私服保安員→解雇。新興宗教にはまる48歳。
  • 山本順一 ゆめの市の市会議員。妻子持ちの45歳。

 

彼ら5人が、それぞれに語ります。

こういう形態で話が進む物語を群像劇、というのだそう。

 

先日読んだ「最悪」も群像劇でした。

テイストもどことなく似ています。

 

www.matsuripan.com

 

奥田英朗「無理」のあらすじ

東北の、とある地方都市。

合併して人口12万人の「ゆめの市」が誕生した。

 

年齢も職業もバラバラの登場人物たちは、皆「ゆめの市」在住。

それぞれに不満を持ちながら生活していたーというあらすじです。

 

上下巻に分かれておりボリュームはありますが、読みやすく、読了までの時間はそれほどかかりませんでした。

 

奥田英朗「無理」の感想

「無理」というタイトル通り、皆がかなり切羽詰まった状況に陥ります。

 

5人の登場人物たちの状況を振り返ってみます。

 

1人目の相原友則は、地方公務員です。

 

地方のお役所の実態があけすけに描かれており、とても面白い◎

学生時代に学んだ、地方自治法を思い出しました。

 

当時はさっぱり興味が持てませんでしたが、こういう具体例を挙げてもらい、小説で読むとすいすい頭に入ってきますね・笑。まあ、あくまでも小説はフィクションなのですが。

 

職員からは不人気だという生活保護課で働く苦難が伝わってきました。

これは確かに「無理」かも…。

 

2人目は、東京の大学への進学を希望する17歳の受験生です。

私も彼女と同じく東京への憧れが強かったので、うまく事が運んで欲しいなと思ったのですが、当然、そうはいかず。

 

この女子高生は物語の途中で、頭のおかしい奴に監禁されてしまいます。

これもやはり、無理な状況。

 

奥田英朗「無理(上下巻)」の背表紙

 

3人目は元暴走族のセールスマン、加藤裕也。

いかさま商売なわけですが、奥田さんの小説に度々登場するチンピラ。

 

奥田さんは、彼らを描くのが本当に上手だなと思います。

突拍子もないことをやらかす輩ばかりで唖然としてしまいますが、不思議とどこか憎めない一面があるのです。

 

さて4人目の堀部妙子は、新興宗教にハマる元保安員の女性。

保安員とは、スーパーで万引き犯を検挙する仕事です。

これは大変な仕事ですね…。少し想像するだけで嫌な気持ちになってしまいます。

 

宗教にのめり込む彼女の気持ちは全く理解できませんでしたが、追いつめられると何かにすがりたくなるのでしょうか。

 

最後、5人目の市会議員の山本は、あまりにも住む世界が違うので想像できませんが、ぶっ飛んでいます。

 

彼の妻も、やりたい放題です。

 

ネタバレにならない程度に申しますと、この物語は登場人物がすべて絡み合うことなくラストを迎えます。

なんとも不思議な終わり方でした。

 

救いがありそう、と言っていいのは一人だけかな。

 

奥田英朗「無理」文庫版

 

最後に

東北ならではの厳しい冬の寒さを描くさまに、私も東北の冬は苦手だったな…と昔を思い出しました。作中で登場するほどは冷え込みませんし、雪も降らないのですが。

 

「無理」というタイトル通り、後半はかなりひっ迫した状況の連続です。

決してスッキリした~という結末ではないのですが、読んでみると地方の抱える課題が見えてくるような気がします。

 

合併して大きな市が誕生したという地域に住む人たちの、あるあるなのかもしれません。