宮部みゆき「日暮らし」について
宮部みゆき著「日暮らし」は2004年12月に講談社から発売された時代小説ミステリー。文庫版は2008年11月に、上中下巻で発売。
宮部さんの作品はどれもすごーく面白いのですが、このシリーズ(ぼんくら・日暮らし・おまえさん)は特に好きです。
時代小説を読んでみたいという人へのプレゼントにもオススメです。でも、本のプレゼントって難しいですよね。(あまり良い思い出がありません。)
ここのところ毎日雨が降り、ウォーキング(というか散歩)もなかなか出来ないので読書をする時間が増えました。
「日暮らし」は6編から構成されており、以前紹介した「ぼんくら」の続編です。
この記事でも紹介済みですが、新たな人物も登場しますので改めて登場人物の紹介を。
井筒平四郎 同心。馬面。
弓之助 平四郎の甥。美形の13歳。計測好き。
小平次 平四郎付きの中間。
お徳 煮売屋。世話好き。
佐吉 植木職人。元差配人。
お恵 佐吉の妻。
総右衛門 俵物問屋・湊屋の主人。
おふじ 総右衛門の妻。
宗一郎 総右衛門の長男。
久兵衛 湊屋の別邸の家守。元差配人。
葵 佐吉の母。総右衛門の姪。
お六 葵宅の女中。夫に先立たれ、住み込みで子供らと暮らす。
政五郎 岡っ引き。
おでこ(通称) 政五郎の手下。記憶力抜群の13歳。三太郎。
彦一 料理屋・石和屋の料理人。
晴香 寺子屋の先生。
宮部みゆき「日暮らし」のあらすじ・感想
おまんま
おでこが、飯もとらずの寝込んでいるという。
医者は身体の病ではないとの診たてだが、おでこは口を閉ざしたまま。
そんなとき、浅草の絵師が殺されたとの知らせが入るー。
「おまんま」というタイトル通り、働かざる者…という言葉が頭に浮かぶくだりがありました。
何の気なしに(←もしかして、故意か?)子供に対して意地悪なことを言う奴って、昔からいるんですね。サイテー。
でも、記憶力抜群のおでこのおかげで事件が解決できたので良しとしましょう。
嫌いの虫
佐吉の職場の仲間が「子が熱を出した」と助けを求めに来た。
子の母親はと問うと、嫌いの虫が騒ぐとかでしばらく帰ってこないのだという。
佐吉の妻・お恵は、夫婦の関係が悪くなっているのを感じていました。そんなとき「嫌いの虫」などと、嫌な言葉を耳にしてしまいますー。
10年前、お恵が佐吉と知り合った頃の回想シーンがあるのですが、佐吉はずっと優しいまま。温かい気持ちになりました。
嫌いの虫が騒ぐと言って出ていく妻の気持ちは量りかねますが、夫婦の形はそれぞれですね。
子盗り鬼
夫を亡くしたお六は、危険な男・孫六から逃れるため、子供たちを連れて葵の屋敷で住み込みで働くことになった。
葵は「この屋敷には子盗り鬼が出る」というがー。
ここで前作「ぼんくら」で存在を匂わせていた葵の登場です。
やはり、葵は生きていたんですね。
それにしても、ヤキモチって厄介な感情ですね。
孫八め。後半のイリュージョン、見事でした。
なけなし三昧
お徳の商売敵が現れた。おみねという女だ。安値で総菜を売り、味もいいという。
儲けが出ない商売をする、おみねの正体と目的はーというあらすじ。
おみねが自ら語った身の上話に、なるほどと納得した私だったのですが、実はそう単純な話ではなかったのです。
本当の謎が解けたとき、ああそっちね、と妙にしっくりきました。
おみねの描写がやけに色っぽいのも、そのためだったのかもしれません。
日暮らし
佐吉が実の母親である葵を殺したと疑われ、拘束された。
佐吉は何故、葵の元を訪れていたのかー?
中下巻のほとんどが、表題作の「日暮らし」。18章までの長編です。
佐吉は長年、母親は出奔したと思っていたのですが、そうではなかった。しかし、殺されてしまいます。この展開は少々酷ですね。
佐吉の周囲の者たちは彼の容疑を晴らし、真犯人を見つけようとします。
弓之助の活躍なくしては、解決には至らなかったのではないでしょうか。
よおく頭の回る13歳です。(しかも美形!)
葵を殺害したのは、意外な人物でした。
香りは密接に記憶と繋がってる、なんて言いますから、今回のようなことが引き起こされる場合もあるのかもしれません。
鬼は外、福は内
最終章は、平四郎が佐吉宅で事件のあらましを語るところから始まります。
内容を書いてしまうと、犯人の名も明かしてしまうことになるので控えます。
ラストは、弓之助のいとこ・おとよの嫁入りシーンです。
賑やかで晴れやかな映像が、くっきり浮かぶような描写でした。
最後に
このシリーズにすっかりハマってしまった、若き日の私。
10年以上の時を経て再読したわけなのですが、やはり超絶面白かったです。
苦い場面もありますが、人情を感じる方が多かったように思います。
前作でも登場したお徳でしたが、世話好きは健在でした。
上中下巻とかなりのページ数にはなりますが、ずーっと面白いまま終わりまで読むことが出来ました。
あまりにも面白いので、終わってほしくない!と思うほど。