宮部みゆき「あやし」を再読
今日も雨です。
布団も干せないし散歩にも行けないし、なかなか困ったものです。
次の晴れ間が待ち遠しいー。
外出も難しそうですので、この週末は自宅で読書でもして過ごそうかと思います。
宮部みゆき著「あやし」(文庫版)は2003年4月に角川書店から発売された短編集。
※単行本としては2000年7月に発売。
全303ページ。
文庫版・巻末の解説は東雅夫氏。
本棚の整理をしていたら、懐かしい表紙を見つけたので再読してみました。
※時代小説です。
実はこの本、かつてのバイト仲間からプレゼントしてもらったものなんです。
私がバイトを辞めるときに、「宮部みゆきが好きって言ってたよね」と差し出してくれた、なかなか思い出深い一冊。
読み返していたら、当時の若かりし頃に書いたと思われる「読書メモ」が。
昔から、やることが変わってないな…。
宮部みゆき「あやし」のあらすじ・感想
9編それぞれのあらすじと感想をまとめます。
居眠り心中
銀次(14歳)は、奉公先の若旦那に何かと目をかけられていた。
そんな若旦那に縁談が起こったが、女中とできていて妊娠しているというー。
あらすじをもう少し説明すると、この女中はお店を出されることになり、借家を与えられました。銀次がおつかいで訪ねることになるのですが、そこで居眠りしてしまいー。
好きになってはいけない相手っているんですね…。
誘った方も良くないし、乗った方も良くないとは思うのですが、人の「念」とはなんと怖ろしいことか。
影牢
かつての番頭・松五郎が、岡田屋でおこったむごい事件について語る章なのですが、この形の回想(一人語り)は、嫌な印象を一層強めますね。
血のつながった親子間で、こんなことってあるの?と信じられない思いで読みました。
それに、ひどい嫁です…。恨み嫉みとはなんと恐ろしいことか。
布団部屋
兼子屋の女中・おさとが急死し、妹のおゆうが奉公することになった。
ある時、女中頭から布団部屋に呼ばれる。聞けば、習わしなのだというー。
わずか11歳で奉公にあがっていた時代があったのですね。
亡き姉が妹を思い、守ろうとする箇所にほろり。
「布団部屋の秘密」が明らかになってから読み返してみれば、習わしの謎や代々主人が短命だという謎が一気に解けました。
梅の雨降る
箕吉の姉・おえんは精神を病み、28歳で亡くなった。
長年苦しみ続けることになったのだが、彼女に降りかかった不運な出来事とはーというあらすじ。
なんて悲しい話なのだろう…。
おえんちゃんが気の毒で仕方がありません…。
安達家の鬼
子守奉公と病人の世話に明け暮れて過ごした主人公は、義母から「恋をしたことがなく、淋しい人生だ」と言われる。
その義母が、女中奉公をしている頃の出来事を語りだしたー。
「安達家の鬼」の正体が物語の中盤以降に出てきます。
なるほど、鬼って本来はそういう存在なのかもしれないなと気付かされた話でした。


女の首
身寄りのない10歳の太郎は口をきかないが、
手先が器用なため、袋物へ奉公することになる。
「女の首」というタイトルから連想したのは「いかにもおっかない話」だったのですが、読み終えてみると、あらま!この章が一番良かった◎(個人的な意見です)
太郎が口をきかないわけが明らかになる後半…そうか!と膝を打ちました。
カボチャが鍵となるストーリー展開に、カボチャ好きの私としては嬉しい。太郎の「おっかさん」が生前、カボチャの色を好んでいたというのも伏線になっていたのです。
時雨鬼
女中のお信は、世話をしてもらった口入屋に相談に訪れるが、主人は寝込んでいると言う。代わりに、つたと名乗る女と対峙することになった。
恋の悩みを打ち明けるお信に、何故かおつたは鬼に会った話を語るー。
お信は若い。18歳である。
その若さで男をみる目が云々というのは難しいなあ。
灰神楽
女中のおこまが、平良屋の主人の弟・善吉を斬り付けた。善吉に斬られる覚えはないと言う。
おこまは様子がおかしく、病におかされているのでは?と皆疑うー。
話の鍵となるのは火鉢。
今は見かけない代物ですが、昔は普段使われていた身近な道具だったのでしょうから、火鉢にまつわる話もあったのでしょう。
二十歳のおこまは、何に取り憑かれたのか…。
蜆塚
御蔵蜆を買い、父のかつての碁敵・松兵衛の見舞いに行った米介。
父を亡くし、口入屋の跡を継いだ米介だったが、病床の松兵衛からある話を聞かされたー。
松兵衛の言うように「害はない」かもしれませんが、不気味な話でした。
作中に登場する「御蔵蜆(おくらしじみ)」は実在した蜆のようです。
浅草御蔵の堀で採れる蜆で、味が良く高価だったのだとか。
まとめ
再読でしたが、内容を覚えていました。(ぼんやりと、ですが)
角川の「怪BOOKS」ですので、妖怪などがお好きな方にもおすすめの短編集です。
その他、江戸時代の下町文化についても興味がわく本でした。
御蔵蜆が取れたのはどのあたりだろう?なんて、東京の地図を眺めたりしました。