まつりパンライフ

家で焼いたパンと読んだ本の備忘録、愛用のキッチングッズの紹介をしています

前川裕「愛しのシャロン」あらすじと感想

前川裕「愛しのシャロン」表紙

前川裕「愛しのシャロン」の登場人物

前川裕著「愛しのシャロン」は2020年8月に新潮社から発売されたミステリー小説。

全270ページの書き下ろし作品です。

 

以前、中瀬(ゆかり)さんが前川さんの作品を紹介していたことから読み始め、はまってしまいました。

それ以降、彼の新刊が出たら必ず読んでいます。

ミステリー小説なのですが、犯人を先に知ってから読んでも(!)十分に面白いです。

 

では、主な登場人物の紹介です。

 

吉井百合 男装ホストクラブ「クロスの薔薇」で働く。23歳。

芦川真優 百合の同居人。ソープランドで働く。お人好し。

館林累 百合の同居人。真優の幼なじみ。ピンサロで働く。

 

田辺 「クロスの薔薇」の客。中年の男性。

蓑井 「クロスの薔薇」の客。中学の英語教師。

竹山 「クロスの薔薇」の店長。

水谷 「クロスの薔薇」の演出家、兼振付師。

 

春日紀里 警視庁の女性刑事。

谷藤力 元警察官の男性。

 

前川裕「愛しのシャロン」のあらすじ

歌舞伎町にある男装ホスト「クロスの薔薇」で働く百合は、真優と累の3人で暮らしていた。

お人好しの真優は母親の借金を返すためにソープランドで働き、ホスト狂いの累はピンクサロンで働いている。

 

百合は14年前に5年間監禁された後、救出されたという過去を持つ。

 

拉致・監禁した犯人の男が出所してくるのと前後し、百合の周りでは不可解な動きが見られるようになる。

 

メッセージ付きのテディベアが送りつけられてきたり、無言電話がかかってきたり。

同居人の行方も分からなくなったーというあらすじ。

 

前川裕「愛しのシャロン」の感想

主人公の百合を含めた3人の若い女性たちが、それぞれの事情を抱えながら夜の街で働いている、という設定です。

 

百合が小学4年生のときに負った傷。

これは彼女が悪いわけではないのですが、生涯彼女は苦しむことになるのでしょう。

そしてなんとこの一件が、不幸の連鎖を招いてしまうのです…。

 

一方の真優と累。

彼女たちは幼なじみです。

お人好しの真優は、体を張って稼いだお金を母親にも累にも援助してしまうのです。

お人好しというのは、時に人を苛立たせますね。

 

累は狡猾な女で、ホストに入れあげ、のらりくらりと現実から逃げています。

容姿に自信がない一方、国立大学卒というプライドがあり、百合にとって実は厄介な存在です。確かに頭は良いのですが、ずる賢く利用するのでたちが悪い。

 

やむを得ない事情があるとはいえ、ルームメイトたちとの暮らしはストレスフルだと思ってしまいました。

 

前川裕「愛しのシャロン」目次

 

百合が働く男装ホストクラブに現れる、謎の男たちが鍵を握ります。

客という立場ですから、いくらでも身分を偽る事ができます。

 

ここで明かすのは止めておきますが、田辺の本当の職業が意外でした。

 

いよいよ後半の第4章から殺人がおこるのですが、この殺害方法がえげつない。

もはやサイコパス…。

 

百合を監禁していた犯人の視点から描かれる箇所があるのですが、これは忌々しくて不快です。

フィクションよ、フィクション。と自分に言い聞かせながら読み進めました。

 

途中、いくつかの裏切りもあり、ラストは手に汗握る展開でした。

 

最後に

前川裕さんの作品は、どれも全て面白いです。ホラー的な要素が好きな方にはおすすめです。

一気読みしてしまうほどなのですが、ショッキングな描写が苦手な方は無理かも…。

 

「愛しのシャロン」なんて、可愛らしいタイトルですが、この言葉を発した奴はかなり頭がオカシイ。

 

そして表紙のテディベア。

読後に眺めるとゾッとします。