まつりパンライフ

家で焼いたパンと読んだ本の備忘録、愛用のキッチングッズの紹介をしています

真梨幸子「四〇一二号室」(改題・あの女)のあらすじと感想

真梨幸子著「四〇一二号室」の表紙画像

真梨幸子「四〇一二号室」(改題・あの女)の登場人物

真梨幸子著「四〇一二号室」(後に「あの女」と改題)は、2012年10月に幻冬舎から発売されたミステリー小説。2015年に文庫版が発売されています。

全373ページの、書き下ろし作品。

 

タイトル通りマンションの40階(!)、四〇一二号室にまつわる話です。

40階、しかも最上階ってどんな人が住んでいるのでしょう?

 

おそらく今後も、高層階に住むことはないだろうと思います。

今の住居は割と気に入っているのですが、いずれ出ていかなければならない身の上。

 

そんなこともあって、チラシが入ってくると物件情報を眺めたりするわけなのですが、真梨さんの小説を読むとマンションの住宅事情が事細かに記されているものがあり、とても参考になるんです。

 

小説に出てくるようなハイグレードな物件には、今のところ縁がありません。

 

しかし、集合住宅ならではのトラブル・事故に関してはなるほどな、と思う部分もあって。だからこそ想像が膨らみ、楽しく読むことが出来るんですよね。

 

では、「四〇一二号室」の主な登場人物の紹介です。

 

三芳珠美 小説家。カメラが趣味。

田中加代 古本屋の店番。老女。

根岸桜子 OL&小説家。

 

西岡健司 編集者。

前原涼子 編集者。西岡の同僚。

奥村マキ 編集者。元女子プロレスラー。

小野崎光子 興信所の所長。さそり座の女…?

 

川尻孝義 漫画家。

川尻郁恵 孝義の妻。会社員。

大崎伸夫 小説家。川尻の同級生。元風俗ライター。

 

真梨幸子著「四〇一二号室」本扉

 

真梨幸子「四〇一二号室」のあらすじ

四〇一二号室に住む人気小説家・三芳珠美は、担当編集者の西岡から、所沢を舞台にした小説を書くよう勧められる。

 

珠美は売れない小説家である根岸桜子に嫌悪感を抱いているが、桜子も同様。

 

マンションの最上階・40階にある、心理的瑕疵物件(いわゆる訳あり物件)の部屋をめぐる物語。

 

真梨幸子「四〇一二号室」の感想

この「四〇一二号室」、とーっても面白かった!

 

登場人物(主に女性)たちの発言から見てとれる、あからさまな嫉妬…。

 

特に強烈なのは、売れない小説家として登場する桜子の嫉妬心。

同業者の珠美に対して、それはもうむきだし。

こんなにも人に対して嫉妬できるものか、ととにかくスゴい。

そして珠美は、マンションから転落−。

 

かつて世間を賑わせた、ある女性の名前が出てきます。こういう登場のさせ方もあるかあ。

好奇心がわいてしまい、読書を中断して彼女について色々調べてしまいました・笑。その方の消息が不明、というのがまたミステリアスです。

 

さて。

この本を読んで騙されない人って、いるの?

と思うほど、見事。私もすっかり、騙されました。

 

読み返してみれば、なるほど。確かに明言はしていないんです。

それにしても毎回のことながら、ミスリードがお上手。 

 

真梨幸子著「4012号室」の目次

 

後半では、「四〇一二号室」をめぐってもう一つの事件が勃発。

小さな思い込みが暴走し、大惨事にー。

 

全ての謎が明かされてからもう一度読んでみると、「あっ…!そういうことだったのか。」と、曖昧な箇所を消化することが出来てスッキリ。

 

初見では気付けなかった小さなヒントもたくさんありましたので、再読も楽しめました。今回も、勝手に思い込んでいただけでした。

 

所沢が「となりのトトロ」の舞台だったとか、かつては遊郭があったとか、へぇー!と興味をひく話題が満載で面白かったです。

 

最後に

植物状態になる人が出てくるのですが、「耳」は機能しているという設定です。

真偽のほどは定かではありませんが、先日聴いていたラジオ(高橋源一郎さんの番組)でも同じような事を言っていたのを思い出しました。

 

一生のうちで一番長く機能しているのが耳…?

胎児は母親のおなかの中で様々な音を聞いているし、この世から去るときに最後まで機能しているのも耳だそう。

 

さて。

私は物件の情報をみるのが割と好き、と書きましたが、こういう事例もあると思うとゾクッとします。

ここまで色々ある物件だと、お値打ちだと言われても住むのはどうかと考えてしまいます。重ねて言いますが、いわゆる高級物件には今のところ住む予定はありません・笑。

 

どうしてこんなに面白い本が文庫化されていないのだろう?と思っていたら、「あの女」に改題して発売されていると知りました。

 

そりゃそうだ、こんなに面白いんだから!と納得。

そしてあの女、という新たなタイトルにも納得!こっちもしっくりきます。