角田光代「物語の海を泳いで」について
角田光代著「物語の海を泳いで」は2020年8月に小学館から発売された本。
全284ページ。
角田さんが読んだ、350冊の本が紹介されている一冊。
様々な媒体(新聞、雑誌等)に発表したエッセイや書評をまとめて読める、お得な本と言っていいと思います。
紹介されている本は小説だけでなく、ルポルタージュや詩集、コミック、とジャンルは多岐にわたります。
「物語に出合う」、「心に残る、あの本この本」、「わたしの読書日記」の三部構成となっており、目次が7ページにもわたります。
ものすごく長い目次ですが、全てのタイトルが記載。
作家の名前と著作が目次に記されているので、あとから確認したいときにすぐにページを見つけられて便利◎
角田光代「物語の海を泳いで」を読んで
角田さんの表現力の的確さ、そして圧倒的な語彙力には、読みながら何度も「やっぱりこの人、凄いな」と思いました。
さすがはプロ。
彼女の書く文章は、わかりやすく私の中に入ってきます。
そして、感情や情景を言葉で表現する技法の巧さといったら。
角田さんと言えば、世界各国へ旅をされているイメージがついてきます。
旅とともに満ち足りた読書の経験もまた、彼女の作品に反映されているのかもしれません。
「物語の海を泳いで」は他の小説との同時進行で、少しずつ読み進めました。
一気読み出来ないような、とても濃い中身でした。
何しろ350冊(!)の本が紹介されているので、ゆっくりと消化しながら読むことをオススメします。メモを取りながら、付箋を貼りながら、何度でも読み返したい本。
既読の本も、何冊かありました。
同じ本を読んで、どう感じたのか?どう表現したのか?が気になり、何とも言えない不思議な感覚になりました。
たとえ似たような感情を抱いたとしても、彼女のような的確な物言いは出来ませんが…。
エッセイでは、「本との向き合い方」のような内容も描かれていて面白かったです。
第三章の「読書日記」は、確かに日記なのだけれど、きちんと要点がまとめてあって見習わねば、と思った次第。
私も日記をつけているのですが、たまに読み返すと、なんと脈絡のない文章を書いているのだろう!と我ながらがっかり。
読みたい本がたくさんあるのに、次から次へと新しい本が発売され、とても追いつかないーというようなことが「あとがき」に記されていました。
全くその通り、と膝を打つ思いでした。
最近、再読の楽しさを知ってしまったので、読んだ冊数は以前のように増えません。
新たな作家さんとの出合いも大切にしたい一方、学生時代に読んだきりになっていた本をもう一度読むと、違った感動が味わえるという醍醐味もあり。
この点は悩ましくもあるのですが、うまく折り合いをつけながら豊かな読書の時間を楽しんでいきたいです。
最後に
随分たくさんの本を読んでいるんだな、と驚きました。お忙しいでしょうに。
場所を選ばず読書できる、という集中力もすごい。
角田さんのいう「書くことが楽しすぎる」という感覚とは、どういうものなのだろう?と思ってしまいました。(苦痛でしかなかったような記憶があるので。)
文字を覚えてすぐに文章を書く楽しさに目覚めた彼女のような人こそ、長年作家を続けられる人なんだろうと思います。
なるべくして作家になった人なのだろうなあ。
小1からの「作文帳」が残っているのだとか。
見ることは叶わないかもしれませんが、一ファンとして興味があります。