凪良ゆう「わたしの美しい庭」の登場人物
凪良ゆう著「わたしの美しい庭」は、2019年12月にポプラ社から発売された小説。
全279ページの書き下ろし作品。
この方の本を読むのは、今回が初めて。
なぜこの本を読もうと思ったのかというと、あの林真理子さんが推薦されていたから(!)です。
林さんがユーチューブを開設しているのを知り、さっそく拝見したところ、とても参考になるコンテンツでした。
推薦本を紹介するという動画なのですが、その中で知った作品の一つが「わたしの美しい庭」でした。
「若いのに、力のあるすごい作家さん」と称賛されていたので、思わず手に取ったという次第。
まずは、主な登場人物の紹介から。
百音(もね) 10歳の少女。
統理(とうり) フリーランスの翻訳家。30代の男性。
路有(ろう) 統理の同級生。屋台バーのマスター。
桃子(ももこ) 39歳。仕事は医療事務。
以上の人物たちは皆、同じマンションに住む住人同士。
他にも何人か登場し、作品は連作の短編集です。
以下、あらすじと感想の紹介です。
凪良ゆう「わたしの美しい庭」のあらすじと感想
「わたしの美しい庭Ⅰ」(第一章)と「わたしの美しい庭Ⅱ」(第五章のラスト)は、10歳の百音の視点で描かれています。
5本の短編集なのだけれど、読み終えてみると長編作品となっているという構成です。
簡単に全体のあらすじを。
百音たちの住むマンションの屋上には、神社と庭園がある。
「縁切り神社」であり、参拝は住人以外でも可能。
それらを管理しているのが、統理。
統理は翻訳家の仕事もこなし、両親を亡くした百音を引き取って育てているー。
あの稲妻
桃子が語り手となっている章。
39歳の独身女性が、周囲からの圧(結婚や仕事、過去の恋)とどう折り合いをつけていくか、が描かれています。
桃子には桃子なりの事情や思いがあって、今の状況なわけで…。
その中で、楽しさや癒しを見つけながら実直に暮らしている彼女の姿は、とても健気でした。
ロンダリング
続いての語り手は、路有(ろう)。
彼はゲイであり、この事実をオープンにして暮らしています。
自由に軽やかに生きているように見えますが、取り巻く現実は厳しいものでした。
偏見の目や両親との複雑な関係を、ゲイの当事者の目線で描かれていて、これはなかなか…。
話は元彼たちの恋愛事情にまで及び、意外な選択肢を選ぶ人もいるのだなと驚きました。
LGBTについて考えさせられた章。
兄の恋人
かつて桃子の恋人だった「坂口君」の弟・基が主人公。
基からすれば、桃子は兄の恋人、というわけですね。
33歳の基は、職場でのパワハラからうつ病を患い、東京を離れて実家に身を寄せているという状況。
東京にいる彼女とのことや、自身の将来への不安からの焦る気持ちー。
桃子との思わぬ再会から、懐かしい思い出話になります。
時を経て昔の知人と話をする、というのはどのような感情を抱くものなのだろう?
基は真面目過ぎるように思います。
でも何だか、彼は大丈夫な気がするなあ。
まとめ
林さんが言っていた通りです。
とても面白い本でした。漂う空気感が好きです◎
凪良さんのお名前は、「流浪の月」で本屋大賞を受賞したときに知りました。
受賞作品も気になります。
ところで、この本を読むきっかけともなった林さんの動画配信。待ち遠しいです。
ご自身の作品紹介では、取材の裏側を披露されることもあり、意外な苦悩なども知ることができます。
そして、それにまつわるこぼれ話も実に面白いのです。
解説されると、そんな背景があったのならばもう一度読んでみようかな?という気になるから不思議なものです。