まつりパンライフ

家で焼いたパンと読んだ本の備忘録、愛用のキッチングッズの紹介をしています

佐藤究「テスカトリポカ」のあらすじと感想

佐藤究「テスカトリポカ」表紙画像

 

佐藤究「テスカトリポカ」の登場人物

佐藤究著「テスカトリポカ」は、2021年2月に角川書店から発売された小説。

初出は「カドブンノベル」2020年12月号。第2部以降は書き下ろし、とのこと。

全553ページ。

 

中瀬ゆかりさんが番組内で推していたので、読んでみました。

佐藤究さんという作家の存在は知りませんでしたが、ハマりそうな予感がします。

初めて読む作品が面白いと、他の作品も読んでみようという気持ちになります。

 

では、主な登場人物の紹介を。

 

土方コシモ メキシコ人の母と日本人の父を持つ男。

土方ルシア コシモの母。

土方興三 コシモの父。暴力団幹部。

 

バルミロ・カサソラ メキシコ人。麻薬密売人。

リベルタ バルミロの祖母。

 

末永充嗣 元心臓血管外科医。

野村健二 元麻酔科医。闇医師。

郝景亮 黒社会「新南龍」の幹部。

増山礼一 暴力団幹部。NPO「かがやくこども」の代表理事。

 

宇野矢鈴 元保育士。

座波パブロ アクセサリー工房で働く職人。

伊川徹 自動車解体場で働く大男。

 

佐藤究「テスカトリポカ」のあらすじ

メキシコで繰り広げられる、麻薬戦争

カサソラ兄弟率いる「ロス・カサソラス」対、新興勢力の「ドゴ・カルテル」。

 

縄張り争いは激化。

市民を巻き込むまでになり、危険な様相。

 

4人のカサソラ兄弟は、ドゴ・カルテルによって襲撃される。

唯一生き残ったのが「バルミロ・カサソラ」。

バルミロは祖母に倣ってアステカの神々を信仰し、いけにえを捧げる事を続けてきた。

 

逃走を続け、インドネシアで元心臓血管外科医に出会い、行き着いたのが日本。

仲間を作り、臓器売買に着手する。

残酷な計画の行く末は、いかに。

 

佐藤究「テスカトリポカ」の感想

面白かった!の一言に尽きるのですが、以下感想をまとめます。

 

読み始めは、聞きなれない都市の名や外国人の名などのカタカナに拒否反応が出てしまい、なかなかページが進みませんでした。しかし、読み進めていくと夢中になっている自分がいました。

第1部は、メキシコに生まれた17歳の少女・メシアの視点で始まります。

 

麻薬ビジネスが横行する町に絶望し、現状から抜け出すべく脱出を決意したメシア。

日本に流れ着き、日本人男性と結婚し、土方コシモ(物語の重要人物)を生みます。

 

彼はネグレクトの状況下で育ちますが、もしも真っ当な教育を受けていたなら…

と思わずにはいられないほどの身体能力の高さ、そして手先の器用さに恵まれていたのです。

 

ネグレクトが引き起こしたとも言える、13歳のコシモが犯した罪。

そして、指名手配されながらも各国を渡り歩くバルミロと出会ってしまった、コシモの運命はー。

 

佐藤究著「テスカトリポカ」背表紙
佐藤究「テスカトリポカ」本扉イラスト

 

第1部を読み終え、どんな展開が待っているのだろう?と、はやる気持ちを抑えきれませんでした。

麻薬売買や臓器売買といった未知の世界。

怖いもの見たさとでもいいましょうか、興味が尽きません。

 

薬物に溺れる者たちの末路は、想像以上にむごいものでした。

悪しき神々を信仰し、「いけにえ」(=心臓)を差し出す者。

 

暴力的で冷酷、息を呑む場面展開に圧巻されます。

 

本物のサイコパスとは、こういう人物らを指すのだろうという者たちが描かれており、恐ろしくなりました。

思考が狂っているだけではなく、強靭な肉体とパワーを持ち合わせているのです。

まともではない者たちを操り、常に先の一手を考えているバルミロ。

 

残虐な行為を続ける彼らの終着点は、どこなのだろう?

誰かが、彼らの犯行を暴くことは可能なのだろうか。

 

まとめ

長編でしたが、最後まで全く飽きることがありませんでした。

メキシコをスタート地点とし、アルゼンチン、リベリア、オーストラリア、インドネシア、そして日本。

密入国を繰り返し、各国を渡り歩いたバルミロが見た光景や感覚が、リアルに伝わってきました。

 

この本を知るきっかけを作ってくれた中瀬さんに、感謝。

中瀬さんは、著者のどの作品も全部面白い、と仰っていました。

ここまで推すのならば間違いなく面白いのでしょうね。別の著作も読んでみたいです。