まつりパンライフ

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東野圭吾「片想い」のあらすじと感想

東野圭吾著「片想い」文庫版表紙

 

東野圭吾「片想い」の登場人物

東野圭吾著「片想い」は、2004年8月に文春文庫から発売されたミステリー小説。

初出は「週刊文春」、掲載時期は1999年〜2000年。単行本は2001年に発売。

全622ページ。

 

20年前の作品ですが、今こそ読んでほしいと思いました。

ジェンダーに関することが描かれている、長編小説です。

 

「ジェンダー」の題材をもミステリー小説にしてしまう東野さん。

 

中心となる登場人物らは、アメリカンフットボール部出身という設定です。

私には縁のない競技なので、楽しめるか…?と疑ってかかっていたのですが、そこは心配せずともOKでした。

アメフトの専門用語が出てきますが、その都度説明があります。

 

あらすじと感想の前に、主な登場人物の紹介です。

 

西脇哲朗 主人公。スポーツライター。

西脇理沙子 哲朗の妻。アメフト部の元マネージャー。カメラマン。

日浦美月 アメフト部の元マネージャー。理沙子の親友。

中尾功輔 元アメフト部。

早田幸弘 元アメフト部。新聞記者。

須貝 元アメフト部。損害保険会社勤務。

 

佐伯香里 バー「猫目」のホステス。

野末真希子 バー「猫目」のママ。

戸倉明雄 香里のストーカー。42歳。

戸倉佳枝 明雄の母。

戸倉泰子 明雄の妻。

広川幸夫 美月の夫。

望月 警視庁の刑事。

 

東野圭吾「片想い」のあらすじ

主人公の西脇哲朗は年に一度、大学時代のアメリカンフットボール部出身の仲間らと集まることにしていた。

その帰り、哲朗の前に元マネージャーの日浦美月が現れた。

 

久々に会う美月は男性の格好をしていた。

そして、「生まれた時から男だった」と打ち明けられる。

人を殺し、追われているのだという。

 

自首するという美月だったが、親友の理沙子が引きとめた。

しばらく面倒をみることにしたがー。というあらすじです。

 

東野圭吾「片想い」の感想

なかなかの長編ですが、あっという間に読めてしまいます。

ストーリー展開の巧みさは、東野作品を読んだことがある方ならばご存知でしょうけれど。

 

まず、突然の美月のカミングアウト。

「男性として生きていきたい」というだけでなく、殺人も犯しているというのですから、インパクト大。

 

結婚して子供を産むも、「女性」にはなれなかったと話す美月。

自分にも家族にも嘘をつき、演技し続けることに限界を感じたのかもしれません。

かつてのアメフト部の仲間たちに会いにいく、という行動はいじらしく感じました。

 

本作「片想い」は、成人男性の主人公・西脇哲朗の視点で描かれています。年齢は30代半ば。

妻の理沙子はどんな気持ちだったのだろう、と思わずにはいられない場面がいくつかありました。

 

哲朗との衝突は方向性や考えの相違だけではなく、性別からくる理不尽な経験などもあったりするのかな。

 

東野圭吾著「片想い」文庫版・背表紙

 

もちろん、ミステリーとしても読ませてくれます。

美月が告白した事件の真相が明らかになるプロセスにも、引き込まれました。

 

意外な人物が絡んでいて、複雑な背景が明るみになってきます。

片想い、というタイトルが切ないです。

 

私は、この本のラストが好きなんです。

元アメフト部らしい、見事なチームプレイ。

何度読んでも、いいなあ。

 

最後に

概念がどうこう、というよりはジェンダーについて改めて考えるきっかけになりました。

 

何も知らないのに、知っている気になっていたのかもしれません。

「当たり前」を疑ってみる機会を与えられたような気がします。

 

理解しにくい分野でも、物語に仕立てられることで情報が得られ、身近に感じられたりするものです。

面白いので、ぜひ読んでみてください。