伊坂幸太郎「AX アックス」の登場人物
伊坂幸太郎著「AX(アックス)」は、2017年7月に角川書店から発売された小説。
全307ページ。
1~5章までの連作です。
初出は「AX」と「Crayon」は小説 野性時代、「Bee」はほっこりミステリー、「EXIT」と「FINE」は書き下ろし作品とのこと。
「グラスホッパー」、「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズです。
どれも以前読んだことがあるのですが、今回は「AX(アックス)」を再読してみました。
というのも、林真理子さんのユーチューブ動画で本作が紹介されていたからです。
林さんのお墨付きだけあって、再読しても面白かったし、伊坂さんの作品はやっぱり好きだなあ。
では、主な登場人物の紹介です。
兜 表向きは文房具メーカーの営業社員だが…。
妻 兜の妻。
克巳 兜の息子。
医師 内科診療所の男。年齢不詳。
松田 兜のボルダリング仲間。
奈野村 警備会社の社員。
伊坂幸太郎「AX」のあらすじ
文房具メーカーに勤務する兜は、妻と息子の3人暮らし。
表向きは会社員だが、殺し屋として「医師」からの指示に従わねばならない状況にある。もちろん、家族には秘密。
殺し屋の仕事からは手を引きたい兜だが、そうはさせてくれない医師。
さて、どうなるー。
伊坂幸太郎「AX」の感想
兜が殺し屋であるとか、設定としては非現実的なのですが、切なくてホロリとさせられました。
後半は、書き下ろし作品とのこと。
あらかじめ、この筋書きは決めていたのでしょうか?
5つの章で構成されているのですが、全体を通して素敵な家族の話になっているのです。
これでもか、というほど恐妻家エピソードが盛り込まれていて、いやさすがに妻に対して気をつかい過ぎでは…と思うのですが、息子である克巳の存在は大きいですね。
彼の観察眼ときたら。
自分の両親の事を、こんなにも冷静にみられるものでしょうか。
殺し屋としての腕は確かなのに、家族の前では妻に頭があがらず、ちょっととぼけたような言動をみせる兜。
家族を思う、やさしいまなざし。
良き夫であり、良き父です。


かと言って、兜の妻が威張っている、だとかいうことはないと感じました。
ごくごく普通の、働く母であるという印象です。
多少(?)強引なところはありますが。
前半では受験生(高校3年生)として登場した克巳ですが、後半ではその後が描かれています。
ここからが特に面白くて、読むスピードがあがりました。
続きが、どうしようもなく気になって気になって。
あの時のあの人が、こうなる…!!
様々な仕掛けが楽しめて、大満足でした。
最後に
約3年ぶりに「AX」を引っ張り出してきて、読みました。
私の境遇は3年間で特に変わったこともなかったのですが(しいて言うならばブログを始めた、くらいでしょうか)、こうして感想を文字にするとなると、細かいところまで検証することに。
有意義な作業でした。
作中でたびたび出てきて、気になっていた事象についても、後半で種明かしがされたり。腑に落ちる箇所がいくつもありました。
伊坂さんの殺し屋シリーズはどれも読んでいるのですが、この機会にもう一度読んでみようかしらと思います。作品が面白いのは間違いないのですが、細かい内容は忘れているだろうなあ。
伊坂さんは、仙台市在住の作家さん。
仙台が舞台として登場することもありまして、そんなときは懐かしい街並みが頭の中に広がります。
コロナ禍で久しく地元には帰れていませんが、自由に移動できるようになったらまずはお墓参りに帰りたいなあ。