白石一文「ファウンテンブルーの魔人たち」の登場人物
白石一文著「ファウンテンブルーの魔人たち」は、2021年5月に新潮社から発売された小説。
全621ページ。
初出は「週刊新潮」の2019年8月8日号~2020年12月10日号。
長かった!けど、面白かったです。
600ページ以上にわたる長編作品ですので、寝転がって本を持ち上げながら読もうものなら、すぐに手が痺れる。(椅子に座って読みましょう。)
では、主な登場人物の紹介です。
前沢倫文 小説家。主人公。
前沢純菜 倫文の娘。23歳。
前沢葉子 倫文の元妻。
妻夫木英理 大学生。倫文の同居人。
リャオ・チェンシー ブルータワーの住人。中国人。
白水天元 レットビ・グループの会長。
白水房子 天元の妹。
マサシゲ AIロボット。
茜丸鷺郎 音楽事務所の社長。
海老原一子 A新聞の記者。
鰻田晃一郎 ロケット研究者。
張龍強 「ハーモニー」の創業者。
両角拓海 純菜の夫。
華子ママ ゲイバー「レミゼ」のママ。
栗子ママ 「レミゼ」の先代のママ。
ウー・フープー 博士。人工子宮の開発者。
登場人物、実はまだまだ出てくるのですが、きりがないので主要となる人物をあげてみました。
白石一文「ファウンテンブルーの魔人たち」のあらすじ
主人公は、60階建ての高層マンションに暮らす50代の小説家・前沢倫文。
彼が暮らす「ファウンテンブルータワー新宿」(通称・ブルータワー)の17階に住む3人の外国人が、立て続けに死亡。
真っ白な幽霊が出る、という噂もある。
特殊な肉体を持つ倫文は、同居人でありパートナーの英理(ひでり)、AIロボットのマサシゲらと共にブルータワーの謎に迫る。
白石一文「ファウンテンブルーの魔人たち」の感想
舞台となるのは「ファウンテンブルータワー新宿」。
この建物は、新宿に隕石が落下し、その跡地に建てられた高層マンションという設定です。新宿というなじみのある土地に、隕石が落ちるという …。
ネタバレになるようなことは記さないようにしているのですが、幽体離脱できる人物が出てきます。
登場人物にAIロボット(マサシゲ)が名を連ねる、というのが面白い設定だと思いました。
将来、マサシゲのようなロボットが開発されたりするのかと想像すると、わくわくする一方、良からぬ事態も起こりうるだろうという気もします。
あらぬ方向へと想像力が飛んでしまいましたが、本作で描かれているマサシゲの行動範囲は、私なんぞの想像をはるかに超えた領域にまで及びます。
ブルータワーで謎の死を遂げた外国人(米中露出身の3人)についても、共通点があったりします。
ミステリアスな魅力を持つ、英理(ひでり)。
弓の名手でもある英理は謎に包まれていた存在でしたが、徐々に過去が明らかになります。
主人公の視点で読むと、裏切られたような隠し事をされているような複雑な心境になるのですが、英理からの見方では、仕方なかったのかもと思ったり。親しくしている、中国人のチェンシーとの関係も気になるところでした。
「人工子宮」の開発に携わったウー博士らが理想とする、最終的な目的…。
私には現実離れしているようにも思えるのですが、皆はどう思うのでしょう?
もしかしたら将来、こういう選択肢も出てくるかもしれません。
独特な性癖の持ち主が、次々と登場します。
中にはそういうヘキを持つ人もいるだろう、というものから、それは道徳的にどうかな、というものまで様々。
こういった点においては、ウー博士の目指すところはある意味理想なのかもしれないなと思ったりもするのですが、偏り過ぎではありますね。
まとめ
マサシゲには「気持ち」や「心」はあるのかもしれませんが、時間という概念がありません。嫉妬心もない、と。メンテナンスを施せば永遠に生きていられる…。
かなり際どくて、エロティックな描写もありました。皆、精力が凄いのです。
そして、本の表紙に描かれた「T」の謎は、読み始めてすぐに明らかに。なるほど。そういう考え方もあるか、といったところ。
日本古来の「妖怪」の考え方に似ていると思いました。
私自身でいうと、飽きっぽいのも、せっかちなのも、潔癖症気味なのも「T」のせいだと思うと気が楽かな・笑。
最近読む小説は、性別の捉え方、そしてその先の将来について考えさせられる内容のものが多いような気がします。出版された年はバラバラなので、たまたまなのでしょうけれど。