まつりパンライフ

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小池真理子「彼方の悪魔」のあらすじと感想

小池真理子「彼方の悪魔」文庫版表紙

 

小池真理子「彼方の悪魔」の登場人物

小池真理子著「彼方の悪魔」は、1991年2月に中公文庫から発売された小説。

全383ページ。

単行本は、1987年11月に中央公論社から発売。

 

今日は、大好きな小池真理子さんの作品のご紹介です。

10年以上前に一度読んだことのある作品なのですが、これ「ペスト」が出てくるんですよ。

あの感染症のペスト。

 

コロナ禍の状況で、今一度読んでみようと思いました。

30年以上前に刊行された作品なのですが、面白いのでぜひ。オススメ作品です。

 

では、主な登場人物の紹介です。

 

柳瀬千春 ニュース番組のサブキャスター。

柳瀬明 千春の夫。古書店経営。

向井 テレビ局のプロデューサー。

野々村貢 ニュース番組のメインキャスター。作詞家。

 

広田健一 大学3年生。

広田 健一の母。

ルル 広田家の猫。

平松軍治 父の会社に勤務。セントポーリア収集家。

平松幸三 軍治の父。

南田 医師。

 

小池真理子「彼方の悪魔」のあらすじ

大学生の広田健一は、留学先のアメリカでリスを飼育していた。

サンフランシスコの公園で捕まえた野生のリスだったが、死んでしまう。

健一は、日本の自宅の庭に埋めることを思いつくが―。

 

一方、土日の夜のニュース番組にサブキャスターとして出演している、柳瀬千春。

彼女の元には、好意を寄せる男性からの手紙が、自宅やテレビ局に届いていた。

 

小池真理子「彼方の悪魔」の感想

あらすじで記した2つの事象を軸に、ストーリーが展開されていきます。

後々、意外なところから繋がります。

 

少し補足しますと、健一が留学先から持ち帰ったリスの死骸にはペスト菌が、という話です。

そしてキャスターの千春は、一方的な思い込みをしている変な男に誘拐されてしまいます。

 

どちらも、こわいですよね。

物語の語り手は、健一、千春、その家族、誘拐犯、医療従事者、と多岐にわたります。

様々な視点から描かれていて、全く飽きることなくページを進めることが出来ました。

 

常識的な見解を持つ者から、異常な欲求を抱く者まで、作家というのはどうして胸の内をこうもリアルに描けるものなのでしょう。

 

小池真理子著「彼方の悪魔」文庫版・背表紙画像

 

手元にある文庫版の表紙に描かれている猫は、広田家のルルちゃんかな。

先日、書店へ行きましたら「彼方の悪魔」の新装版が並んでいるのを目にしました。

感染症を取り扱った小説として、注目されているのかもしれません。

 

ハラハラ、の連続でした。

ああ、それは触らない方が…だとか、そこに行っては危ないのに…だとか。

目に見えぬペスト菌との闘いは、コロナ禍の状況とどこか酷似しているようにも思えます。

見知らぬ感染症の対応に追われる、医師たちの苦悩も読み取れました。

 

誘拐犯からの視点でも描かれている、本作品。

この犯人、サイコパスというやつでしょうね。

しかし、周囲の人間はその本性を見破れないというのがキモです。

 

そして、妻の活躍をあまりよく思わない夫、の描き方が面白かったです。

自分の予想に反し、視聴者から支持されている千春。華やかな世界で輝く彼女の姿に、嫉妬したのでしょうか。人の心は複雑ですね。

 

この小説の結末(ペスト菌はどうなったのか、誘拐された千春はどうなったのか)は、ぜひ読んで確かめて下さい。

 

登場人物たちは、常に恐怖と隣り合わせの日常を送っていたのです。

 

まとめ

小池さんの作風、素敵だなあ。

ストーリーも練られているし、流れるような美しい文章に、うっとり。上品なんですよね。

 

10年前にこの本を読んだときは、まさか近い将来、世界中が感染症の恐怖にさらされる事態になるとは思いもよらず。

あくまでもフィクション、なんて思っていましたが、分からないものですね。

 

改めて読んでみて、より恐怖を感じました。

作中に出てくるのと、似たような事件も起こっていますし。