林真理子「小説8050」の登場人物
林真理子著「小説8050」は、2021年4月に新潮社から発売された小説。
全397ページ。
初出は「週刊新潮」。
4月に発売された、林さんの新刊の紹介です。
春頃から、様々なメディアで取り上げられているのを目にしていましたが、読むのがこわくてなかなか読めなかったんです。8050問題や引きこもりを題材にした小説って、気が滅入りそうだなと思っていたから。
でも、構えすぎていたようです。
読み出したら、とまらない。
では、主な登場人物の紹介から。
大澤正樹 50代の歯科医。
大澤節子 正樹の妻。専業主婦。
大澤由依 大澤家の長女。
大澤翔太 大澤家の長男。
野口啓一郎 由依の恋人。
小野奈津子 節子の元同僚。
高井守 弁護士。
槙原祐子 弁護士。
益田好之 翔太の学校の元用務員。
林真理子「小説8050」のあらすじ
歯科医をしている大澤正樹には、7年間引きこもりの二十歳の息子(翔太)がいる。
原因となっているのは、中学2年生のときのいじめ。
引きこもりの家族がいることで、娘の結婚の妨げにもなっている状況。
妻の節子と共に手を尽くすが、うまくいかず、暴れることも。
正樹と翔太は、いじめの加害者らを訴えることにしたーというあらすじ。
林真理子「小説8050」の感想
社会問題にもなっている、8050問題。
深刻だと思います。
80代の親が50代の子供の面倒をみる、という構図ですが、この作品で描かれているのは50代の親が20代の引きこもりの息子の面倒を、というもの。
主人公は父親の正樹ですが、母親である節子の視点から描かれている箇所もあります。
歯科医の正樹は、息子を医者にするべく中高一貫の進学校に通わせますが、引きこもりになってしまいます。
正樹は、専業主婦である妻のせいだと決めつけてきました。
「引きこもりの弟」のせいで、結婚話が思うように進まない姉。陰湿ないじめ。
滅入ってしまうような場面もあるのですが、話がどんどん進んでいくので、暗い気持ちになる隙がありませんでした。
それよりも、翔太自身の変化、大澤家の変化が気になるように。
妻のせいにしてきた正樹でしたが、問題に向き合う中で次第に考えが変わってきたところが良かったです。必死に守ろうとしているのです。
ただ妻としては、長年、夫に言われ続けてきたことに対しての不満が出てきて、我慢の限界に。夫婦のありかたも、描かれています。
林さん、TBSラジオ(伊集院さんの番組)にもゲスト出演されていて、特に大変だったと言っていたのが、法廷シーン。
取材を重ね、苦労して書き上げたとのことでした。クライマックスのその箇所は、心して読ませていただきました。
「8050」になってしまうその前に…のような望みがある終わり方で、なんだかホッとしました。
最後に
読むのを後回しにしてしまったことを、ただただ後悔。
結局、読み始めたらのめり込み、1日で読み切ってしまいました。
全く飽きさせないテンポで進んでいくのです。さすがは林さん。
歯医者に行く日の前日に、この本を読みました。
「小説8050」では、引きこもりの息子を持つ父親が歯科医、という話だったので、ちょっとしたシンクロだわ、とざわざわ。
最後の最後、謝辞の箇所に中瀬ゆかりさんの名前も記されており、感激。
中瀬さんも、ラジオやテレビ番組内で本作を推していましたが、「チーム8050」のメンバーだったようです。
連載中から「いつ本が発売になるのか」と、かなりの反響があったのだとおっしゃっていました。
確かに面白かったですし、身近に引きこもりで悩んでいる人がいたら希望が持てるんじゃないかなと思いました。