長江俊和「出版禁止 いやしの村滞在記」について
長江俊和著「出版禁止 いやしの村滞在記」は、2021年8月に新潮社から発売された小説。
全275ページの書き下ろし作品。
表紙にひかれて手に取った本です。
タイトルの「あぶない」感じと、表紙画像ののどかな風景のミスマッチがどうにも気になりました。
なんでも「出版禁止」の第3弾なのだとか。
そんなシリーズがあったなんて、知りませんでした。
いつもは登場人物の紹介から入るのですが、詳しく説明してしまうと都合が悪いので今回は省略。
以下、あらすじと感想をまとめます。
長江俊和「出版禁止 いやしの村滞在記」のあらすじ
ライターが、奈良県に実在したある団体を取材して書いたというルポルタージュ。
ある団体とは、「いやしの村」という非営利団体である。
そこには呪いを信じる人々が集団で暮らしていて、人殺しが行われているとの噂を聞いた著者は、いやしの村に滞在して取材を行った。
呪いは、本当に存在するのかー。
長江俊和「出版禁止 いやしの村滞在記」の感想
本の帯にも書いてある通り、これは再読必須ですね。
1度目に読んだときは、正体不明の「もやもや」が残る印象でした。
そして後半(というかほぼラスト)で、「え?」と混乱。
脳内を整理しつつ再読してみてようやく、そういうことだったのか!と膝を打った次第です。
いやしの村、なんてタイトルに含まれていますが、内容はなかなかにヘビーでした。「出版禁止」も、ある意味納得◎
巻末の参考文献には「呪い」の文字が並びます。(ひょえぇ!)
古くからの風習、特に奇習って、怖いもの見たさでつい検索していまうのは私だけかな。
国内に限ったことではないのですが、信じられないようなことが行われていたり信じられていたようです。


さて。
いやしの村にある施設では、村人たちがのどかに暮らしています。
しかし彼らは、心に傷を負った人々でもあるのです。
村の代表者は、なかなかの人格者。
心と体が弱っているときは、こんな暮らしを望む気持ちにもなるだろうと思える、平和的な場所です。そこで、人を呪い殺すという恐ろしい行いがなされているとは到底思えませんでしたが…。
部外者の取材にも、協力的。
むしろ異様なほどの歓迎ムードで、これは何かあるのでは?と勘ぐってしまいます。
「素数ゼミ」に触れられている箇所があるのですが、このセミご存じでしょうか。
ある周期で羽化するセミです。ミーンミンと鳴く、あの虫。
し、しかし…
「たまむすび」を聴いているラジオリスナーだったら、赤江さんのエピソードを連想したんじゃないかなあ。セミと言えば赤江さんでしょう!となっちゃってる・笑。
話がそれました。
油断せずに読み進めたとしても、この仕掛けには参りました。
作中にも登場する「運命は決まっている」という説、どう思われますか。
私はなんだか「アカシックレコード」の考え方と似ているなあ、と。
謎解きのようでいて、哲学的な要素も含まれているという不思議な本でした。
まとめ
全体を通して、真梨幸子さんの作品に似ているなと感じました。
彼女の作品が好きな方は(私を含め)、楽しめると思います。
某「祭」についての内容がこわすぎました。
「出版禁止」シリーズ、第1弾&第2弾も気になるところ。
久々に書店に行ってみましたら、読みたい本が色々と見つかりました。
それと、端の方の売場には来年のカレンダーや手帳が。
毎日、短い日記を付けているので(といっても、歩いた歩数や献立等の簡単な内容ですが)、来年はどれにしようかとあれこれ見てきました。
来月中には決めたいところ。