伊坂幸太郎「死神の精度」について
伊坂幸太郎著「死神の精度」は、2008年2月に文春文庫から発売された小説。
千葉という死神が主人公として登場する、連作の短編集です。
死神が、担当する人物の調査を行い「可」なら8日後に死亡。「見送り」なら死なずに過ごせるという仕組み。
巻末の解説は、沼野充義氏。全345ページ。
単行本は2005年6月に刊行されています。
初出は「オール讀物」等。
新刊も読むのですが、過去に読んだ作品も再び読もうと心がけています。最近は特に。
違うんですよね、以前(10年くらい前?)読んだ感想と。
これもまた、本を読む楽しさです。
では、6編それぞれのあらすじと感想を記します。
伊坂幸太郎「死神の精度」のあらすじと感想
死神の精度
電機メーカーに勤務する女性の調査をすることになった、千葉。
冴えない見た目のその女性は、苦情処理の担当。「変なお客さん」からの電話に悩まされていたー。
親が、願いを込めて彼女につけてくれた名前。
その通りになりました。
ストーカーまがいの変な顧客、その正体は…!
こんなストーリーが待ち受けているなんて。
真面目に仕事に向き合っていれば、いいことがあったりするのかな、という希望を持たせてくれた素敵な表題作。
死神と藤田
藤田というやくざを担当することになった千葉。
藤田が他の組の男の居場所を探している、というので千葉も同行することにしたのだったー。
筋を通す藤田が、格好よかった。
舎弟に慕われるのも頷ける。
彼のような人には、真っ当に生きて欲しかったなと思わずにはいられない。
吹雪に死神
情報部から千葉に「ある洋館に泊まらせてもらい、調査せよ」との指示が出される。その洋館では、何人かの死亡者が出ることが決まっているという。
訳も分からぬまま、洋館を訪れる千葉ー。
読者も千葉と同様、一体どういうことか?といぶかりながら読んでいくことに。
ミステリー色が強い一作で、ぞくぞくしながら結末を迎えました。
吹雪は様々な計画を妨げるんですね。
恋愛で死神
ブティックに勤務する荻原は、ある女性に片思いしていた。
しかし彼女は荻原を、「迷惑行為をしてくる人物」であると誤解しているようだったー。
結末から始まる物語でした。
今回の対象者は死ぬのです。
似合わぬ眼鏡をかける荻原よ…。
もし来世があるとしたら、彼のような人には幸せになってほしい。切なすぎるけどキュンとなる話。
旅路を死神
調査対象者は、殺人を犯して逃亡中・二十歳の森岡。
千葉の運転する車に乗り込み、北へ向かうように指示をしてきた。
奥入瀬まで行けという、森岡の思惑はー。
死神と殺人犯の、東京から青森までのロングドライブ。
宿に泊まり、観光し、グルメを堪能。
粗暴な森岡だったけれど、千葉の指摘に聞く耳を持ったのが意外でした。
死神対老女
調査するのは、海辺の町で美容室を営む70過ぎの女性。
知り合いを亡くしてばかりだという彼女。千葉に「10代の客を連れてきてほしい」と頼むが、その目的とはー。
途中「あれ、もしかして?」→「やっぱり!」と、面白い仕掛けに気付きました。
老女、とかタイトルにあるから油断してました。
締めにふさわしい作品です。
まとめ
伊坂さんの作品は以前から好きでよく読んでいたのですが、どういうわけか?ここ最近、ますます好きに◎
この本に関してもそうなのですが、読後、しばらく余韻に浸っている自分がいます。
面白いので、ぜひ。
並行して読んでいた「死神の浮力」をまとめた記事です。
死神の千葉が登場する、長編小説です。