伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」について
伊坂幸太郎著「アイネクライネナハトムジーク」は、2014年9月に幻冬舎から発売された連作の短編集。
全285ページ。
初出は「パピルス」等。
「あとがき」で知ったのですが、「斉藤和義さんからの歌詞の依頼」というところから、執筆が始まったのだそう。
伊坂さんは、斉藤和義さんの大ファンなのだとか。
いい歌、たくさんありますよね。って、なんとも薄い感想しかなくてごめんなさい。でも、ラジオからも彼の曲はよく流れてきますし、斉藤さんはトークも面白いなあという印象があります。
伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」のあらすじと感想
アイネクライネ
データの紛失により、街頭アンケートを行うことになった27歳の主人公。
紛失のきっかけを作ったのは先輩社員だった。彼は、妻と娘が家を出て行ったことにショックを受けていたー。
街頭アンケートって、断ってしまうことがほとんどですが(学生時代、軽い気持ちで答えたら、変なものを売りつけられそうになった事がトラウマとなっている)、こういう理由ならば協力しますとも。
それにしても「出会い」って、どこにあるか分からないですね。
ライトヘビー
美容師をの美奈子は、顔なじみの女性客から「弟を紹介したい」と言われる。
断った美奈子だったが、なぜか電話がかかって来た。何度か話しているうちに、彼に不思議な感情を持つようになっていったー。
歌を売る、謎の男性「斉藤さん」が登場。
100円を払うと、そのときの気持ちにあう曲(しかも一部)を流してくれるという商売をしている、斉藤さん。
今の私ならば「日々単調で、ありがたいと言えばありがたいのですが、このままぬるま湯に浸かっているような凪の人生でいいのでしょうか」とか言ってみるかなあ。誰かに何かを言って欲しいとき、ある。
で、美奈子の話。
声だけの関係性から、まさかの場面で彼の姿を見る事態に。
恋愛の話なのに謎解きっぽくて、良かった。何度読んでも、良い話。
ドクメンタ
ドクメンタとは、5年に1度ドイツで開催される国際的な美術展のこと。
しかし美術展の話ではなく、5年に1度と言えば運転免許の更新。それにまつわるお話です。
藤間が運転免許センターで出会った、赤ちゃんとその母親。
母親と話をしていると、共に期限ぎりぎりのタイミングで更新に来ていることが分かった。そしてその後、意外な再会を果たすー。
面白い偶然が描かれています。なくもない話か、と。
免許の更新は、通知の葉書が届きますよね。せっかちな自分は、届いたその日からそわそわ。藤間たちがいうように、これは性格でしょうね。
この章だけでいいから、うちの家族に読んでほしい。
切実にそう思う。どうしてそんなに大雑把なの?と問いたい。
私が神経質すぎるのかもしれないけれど、限度ってものがある!とここに記しておこう・笑。届かぬ思いだけれど。
藤間のように、相手から言われたことを思い出し、自分の行動を振り返ってくれたらなあ。(遠い目)
ルックスライク
高校生の久留米和人は、クラスの目立つ女子から「駐輪場に一緒に行ってほしい」と頼まれる。
一方、ファミレスで働く朱美は恋人との関係が冷めていくのを感じていた。
高校生の箇所と、若い男女の箇所、別々の語り手が登場し、話が進んでいきます。
はて?となりますが、最後の種明かしがね、笑っちゃうほどいいんです。
メイクアップ
かつてのいじめっ子との対面。
しかし向こうは、こちらに気付かぬまま接してくる。
さて、どうする?
同期の友人は仕返しすべし、と言うがー。
実際には難しい、よね。
プチ呪いでもかけとくか。
かさぶたの治りが遅くなれ、とかね。ふふ。
ナハトムジーク
群像劇で描かれるラスト。
時間軸がバラバラなのにも、訳がありまして。
これがまた、良いのです◎
今までの登場人物やその家族が、かわるがわる語り手になります。
それぞれに「こんな思いがあったのか」と知ることが出来ました。
ヘビー級世界チャンピオンのボクサー・小野をめぐる最後の章は、人と人との繋がり(出会い)の妙が楽しくて、何度も読み返す結果に。
これって(前の章の)あの人のことでしょ?と気付けて腑に落ちる箇所がいくつも出て来ました。善良な人たちが幸せに暮らせる日々、平和でいいなあ。
まとめ
今さら私が言うまでもないのですが、とてもとても良い本だと思います。
多くの人に読まれるといいなあ。
あとがきにもあるように、伊坂さんにしては珍しく物騒な人物(殺し屋だとか死神だとか)が出て来ませんでした。
そうそう、斉藤和義さんといえば。
TBSのラジオ・たまむすびにゲストで出ていたときに「たまむすび、聴いてますよ」と。赤江さん、驚いてましたわ・笑。
コロナ禍で自宅で過ごすことが増えて、聴くようになったのだとか。
この話、舞台が仙台なのですよ。嬉しい。