道尾秀介「雷神」の登場人物
道尾秀介著「雷神」は、2021年5月に新潮社から発売されたミステリー小説。
初出は「週刊新潮」。
全382ページ。
この本、一気読みだったなあ。
運よく十分な読書の時間が取れたという事情もありますが、物語の面白さに引き込まれてあっという間に読み終えました。雷は昔から苦手でしたが、やっぱりこわい現象だわ、と改めて思いました。
では、主な登場人物の紹介です。
藤原幸人 主人公。料理人。
藤原夕美 大学生。幸人の娘。
藤原悦子 幸人の妻。
藤原南人 幸人の父。
藤原英 幸人の母。
藤原亜沙美 幸人の姉。
太良部希恵 神社の一人娘。亜沙美の同級生。
太良部容子 希恵の母。宮司。
清沢照美 新潟の元看護婦長。
彩根 写真家の母を持つ男性。
道尾秀介「雷神」のあらすじ
主人公の幸人は、大学生の娘・夕美に手伝ってもらいながら埼玉県で料理屋を営んでいた。妻は、15年前に交通事故で死亡。
穏やかに暮らせると思っていた彼のもとへ突如、「秘密を知っている」という脅迫電話がかかってきた。
相手は、幸人が必死に隠してきた「あの事」を言っているのかー。
店で倒れてしまった幸人は、娘の提案により姉の亜沙美と3人で、生まれ故郷の新潟県の村を訪ねることに。
30年前、この村のお祭りで起きた悲劇。前年には母親が死亡。
毒キノコによる事件がおこり、容疑者として疑われた幸人の父。
逮捕こそされなかったが、家族3人は逃げるように埼玉県に越して来たのだったー。
道尾秀介「雷神」の感想
15年前、幸人の家族に起きた突然の悲劇から始まる物語です。
不幸な偶然が重なり、起きてしまった事故でした。
当時、幸人の娘・夕美は4歳。この時点ではまだ、悪意のある人物は出てきません。
残念だけど、世の中、こういう事も起きてしまうのかもな、という事故。
そして、現在。
夕美は写真を学ぶ大学生になり、主人公の営む料理屋を手伝っています。
父ひとり子ひとりが、仲良く暮らしている穏やかな日々。
15年前の悲しい事故が悪い作用をしていないようで、ほっとした私です。
しかし、それも束の間。
見知らぬ男から、金銭を要求する電話がかかってきたのです。
これが引き金となり、幸人は30年前の事件を調べ直すことにしたのでした。(この辺りから、はやる気持ちを抑えられなくなる私。)
夕美と姉の亜沙美と共に、昔暮らしていた新潟県羽田上村へと向かうことに。
物語は、30~31年前の出来事も描かれています。
新潟で暮らしていた幸人の家族でしたが、お祭りの前日に母親が遺体となって見つかります。謎が残る死でした。
その翌年のお祭りでは、キノコ汁に毒キノコが入れられて、死者が出る事件が。
現在のシーンでは、過去を回想しながら推理を進めていく主人公。
本当に父親が、毒キノコ事件の犯人なのだろうか?
途中、鋭い指摘をしてくる人物が現れます。
写真家の息子です。ちょっと厚かましいところもありますが、個性的で良かったです◎
真実が明らかになるにつれ、渦中の人物たちは戸惑います。私も戸惑いました。
事件の真相を予想できた人、いたとしたら凄い。
まず思いつかないです。
方言や気候など、複雑に入り組んだ事象が、最後は見事にビシッとまとまるのです。
大切な人を守ろうとする思いは、「絶対」でした。
優しさに溢れています。どこで間違って、こんな悲しい事件になってしまったのだろう。
未来ある若者が、希望をもって生きていけますように。
最後に
ミステリーってどれもそうだと思うのですが、全容が見えると、一気に辻褄があうんです。
あのシーンには、そういう意味が隠されていたのか、と。
わずかな思い違いや、記憶の曖昧さが悪いように作用してしまうと、思わぬ事件に発展してしまうこともあるのだという恐ろしさが描かれていたように思います。
にしても、こういった構想はどこから生まれるのだろう?と思ってしまいます。
様々な種類の植物やキノコが出てくるので、画像検索しながら読みました。
意外な一面がある植物もあり、そちらでも楽しむことが出来た一冊でした。