まつりパンライフ

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朝井まかて「類」のあらすじと感想

朝井まかて「類」の表紙

朝井まかて「類」の登場人物

朝井まかて著「類」は、2020年8月に集英社から発売された小説。

全494ページ。

初出は「小説すばる」。

 

この本を読んでみようと思ったわけは、林真理子さんのユーチューブ動画で紹介されていた本だったから。

なんでも、「柴田錬三郎賞」を受章された本なのだそう。

ユーチューブで、文学賞についての解説も度々なさっている林さん。

作家であり、選考委員もなさっている彼女の説明は、説得力がありますね。

 

動画で、面白い作品を紹介してくださっている林さん。

この本、期待以上の面白さでとても良かったのです◎

タイトル「類」は、森鷗外の息子の名前。

そう、鷗外の息子である類さんの視点で描かれている物語。

※フィクションです。

 

これは、ぜひ読んでいただきたい。

本当にオススメです。

 

主な登場人物は、以下の通りです。

 

森類 主人公。森鷗外の末子。

森志げ 森鷗外の妻。

森茉莉 森鷗外の長女。

森杏奴 森鷗外の次女。

森於菟 森鷗外の長男。

 

この他にも作中には、著名な方々のお名前が数多く登場します。

 

朝井まかて「類」のあらすじ

森鷗外の息子として生まれた類。

勉強が苦手。

画家を目指すも、結果はふるわず。

 

ふたりの姉は、才能が豊か。

 

家庭を持った類は、戦後の混乱の後、本屋の店主になることを決意。

類は、どんな人生をたどったのかー。

 

朝井まかて「類」の感想

森鷗外に類さんという息子がいたと、この本を読むまで知りませんでした。

森鷗外の子として有名なのは、おそらく茉莉さんではないでしょうか。

ユニークな女性ですよね。

彼女の人柄についての記述も、多いです。

 

さて、明治44年に生まれた類。

8つ上の姉・茉莉、2つ上の姉・杏奴(あんぬ)、そして兄の於菟(おと)がいますが、彼は母親が違い、21も歳が離れています。

母親の志げは、なかなかに気が強い女性のようで。

美人だったようではありますが。

それ、自分の子供に言う?みたいな箇所がいくつかあって、苦笑。

優しい父(これは意外でした)に対し、母は叱ってばかりという印象。

 

父が、あの森鷗外となれば、周囲からはさぞ期待されたことでしょう。偉大過ぎます。

鷗外の存命中、森家の贅沢ぶりといったら。

全てにおいて「一流」を好んだ一家。

鷗外は花を育て、愛でる生活を送っていたとのこと。花畑の描写、良かったです。

(知らない花や庭木は、画像検索してしまいました)

 

朝井まかて著「類」の目次

 

杏奴さんも、強く印象に残った人物でした。

からかわれることの多かった類を助け、未亡人となった母を支えました。

茉莉は自由すぎる人ですから、杏奴の生活能力の高さが際立ちます。

正義感が強くて社交的でもあったらしい、杏奴。

昭和6年、類と共にパリへの留学も果たします。(羨ましい!)

 

フィクションではあるのですが、モデルになった人物が存在していたという事実が、読者の想像心をかき立てます。

 

戦後の類の生活は、日増しに困窮。

妻の美穂の苦労も、察します。この人は、主婦のプロですね。

家事全般、なんでもこなせる人。

 

類は周囲が期待するような作品は出せなかったかもしれませんが、幸せだったんじゃないかなあ。

彼の視点からという形で、こんな素晴らしい小説に仕上げた朝井まかてさん。凄すぎる。

 

最後に

林さんのおっしゃる通り「品のいい小説」でした。

本屋の娘である林さんは、類が本屋の店主になったことに対して親近感を持たれたと話されていました。

 

斎藤茂吉、佐藤春夫、与謝野晶子夫妻、永井荷風、志賀直哉、藤田嗣治、岡本太郎などなど、明治から昭和にかけて活躍した方々のお名前が登場します。

次元が違い過ぎて、クラクラしました。

 

そして、装画、森類との文字を発見。

画家を目指していただけのことはありますね。

絵画に詳しいわけではないのですが、幻想的でいい絵だなと思いました。