篠田節子「女たちのジハード」の登場人物
篠田節子著「女たちのジハード」は、2000年1月に集英社文庫から発売された小説。
全522ページ。
※単行本の刊行は1997年1月。
巻末の解説は、田辺聖子氏。
第117回、直木賞受賞作品です。
主な登場人物は、保険会社に勤務する5人のOL。
年長者の斉藤康子は入社して12年、地味に生活してきた。そして、気付けば30代。みどりは、5人の中で唯一の既婚者。
三田村リサは結婚願望が強く、気が利く23歳。
同い年の浅沼紗織は、ハッキリと物を言います。アメリカが好きで、英語で食べていきたいという野望があります。
年少者は、19歳になったばかりの紀子。
篠田節子「女たちのジハード」のあらすじ
同じ職場で働く、タイプも立場も異なる5人の女性たちの物語。
家を買おうと画策する者、不本意な異動に納得がいかぬ者、キャリアアップを目指して勉強を続ける者、なんとしても良い条件の結婚がしたいと望む者。
しかし、思い通りには進まないー。
篠田節子「女たちのジハード」の感想
5人は、皆それぞれに逞しい女性たち。
求めるものは違っていますが。
この本を読んだ人が、どの女性の考え方や生き方が好きか、意見を聞いてみたいです。
物語のはじめに康子の相手として出てくる男は、身勝手なふるまいをするシナリオライターでして。こずるくて正直な彼。
この男との一件で、マンションを買おうと決意した康子。
しかし彼女が、まとまったお金を用意しようというときに明らかになるのが、大いなる誤算。
これは、男性社員との待遇の違いからくるもの。こういう事例もあるのか、とやるせない気持ちになりました。今は、大分改善されているとは思いますが。(いや、思いたい)
この顛末が、実に愉快。
19歳の紀子は商社マンと結婚したものの、うまくいかず。
このカップルは、育ちも考え方も違い過ぎました。それにしても、紀子の生活能力のなさときたら。意外と、こういう人の方が人気があったりするのかな。
ハイスペックな男性との結婚を夢見る、美人のリサ。昔の自分だったら共感できていたであろう(笑)、彼女の考え。
でも、結婚をゴールにしてしまうのは違うんですよね。
リサが最終的に選んだ男性、とてもいいと思いました◎母親とのバトルが、他人事とは思えなくて面白かったです。同性の親って、どうして意見がかみ合わぬのだろう。
リサと同い年の紗織は、会社に期待するのをやめて「英語で食べていく」という夢を追います。
働きながら専門学校に通ったり、即実行に移すあたりが男前。
納得できないことには、誰が相手であっても意見します。ちょっと空気が読めないところが玉に瑕ですが、泣き寝入りはしないところとか、とにかくカッコいいのです。
既婚者のミドリも理不尽な目に遭いますが、そこからの巻き返しが凄かった。
もやもやとした気持ちになる箇所もありましたが、一転し、よくやった!と晴れやかな気分にさせてくれた一冊でした。私は、紗織にとても好感が持てました。こんな風に生きてみたいし、生きられたら満足だろうな。
まとめ
そうか、携帯電話が普及していない時代に社会人だった人は、自宅や職場の電話で連絡を取っていたのか…。プライベート、筒抜けですね。
1997年に刊行された作品ですから、康子はバブルの恩恵を受けたようです。
20代で「7桁のボーナス」なんて、本当にあったんですね。
巻末の、田辺聖子さんの解説も良かったです。