篠田節子「贋作師」の登場人物
篠田節子著「贋作師」は、1996年1月に講談社文庫から発売された小説。
全360ページ。
※講談社ノベルスとして1991年に刊行された作品を、加筆修正したとのこと。
巻末の解説は長谷部史親氏。
芸術の世界はよく分からないけれど、興味深く読み進めることが出来ました。
そして、随分昔に発表された作品のようだけれど色あせない面白さ!
では、主な登場人物の紹介です。
栗本成美 修復家。
阿佐村慧 成美の美大時代の友人。
高岡荘三郎 画家。
雅代 高岡の元妻。
大沢芳子 高岡の姪。
喜多方 学芸員。
笠原 美術史の教授。
滝沢才一 修復家。
原川 地方紙の記者。
篠田節子「贋作師」のあらすじ
日本洋画界の大御所、高岡荘三郎が「生き過ぎた」という遺書を残してこの世を去った。故郷の山林で首を吊っての死亡というのは、釈然としないー。
彼の死後、自宅の保管庫にある作品を市場に出すため、修復が必要となった。
任されたのは、栗本成美。高岡の指名だというが、成美とは面識がない。
修復の作業は高岡のアトリエで行われることになったが、そこには女主人で相続人の姪が監視の目を光らせて待っていた。
修復を進めるうち、美大時代の知人の死が気になった成美は、真相をつかもうとするー。
篠田節子「贋作師」の感想
タイトル通り、贋作を生み出す話ではあるのですが、ミステリーの要素も濃く感じる作品でした。
主人公の成美は知人である慧の死に不審なものを感じたり、高岡の姪の振る舞いに不自然さを覚えます。
何かを隠しているー?という彼女の勘は当たることになるのですが、なにしろその展開が予想もつかないところへ行くのです。
慧が大学を去ったのは、数カ月後に卒業を控えていた頃。その後、彼が向かった先が高岡のところでした。
高岡の元にいた17年間の間に、何があったのか。なぜ39歳で死なねばならなかったのか。
人物画、静物画、風景画など、作中には様々な絵の描写が出てきます。
その表現力が、豊かなのです。
作者の教養の深さをうかがい知ることが出来ます。
成美は作業を進める中、慧の死だけではなく、高岡の自殺や元妻の失踪にも違和感を覚えるようになるのです。元妻の雅代は40も年下。この結婚は彼の創作に良い影響を与えたようでしたが、彼女の失踪とともに失墜ーという経緯があります。
芸術の世界を描いていながらも、話は複雑な様相を呈しています。
成美が感じた違和感を調べるべく本筋に切り込もうとするも、各所で理不尽な扱いを受けることに。
しかし、それを覆そうと策を得るのです。その潔さときたら。
危険な目にあうことを承知で行動する、彼女の芯の強さ。
高岡の姪、芳子の忌々しさが始終付きまといます。
クライマックスのシーンは、手に汗握る展開でしびれました。
話の展開が予想外で、ラストシーンは圧巻。
成美の同業者・才一のキャラが良くて。
信頼できる友人がいるって、心強いなあ。
まとめ
前回読んだ作品もそうだったけれど、篠田さんの描く女性像って、なんてかっこいいのだろう。媚びない、へこたれない!そして自分に正直。
今回も、自称中年・成美のハードボイルドな感じが心地良かったです◎
にしても、ピラニア…!