まつりパンライフ

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吉田修一「ミス・サンシャイン」のあらすじと感想

吉田修一「ミス・サンシャイン」表紙画像

 

吉田修一「ミス・サンシャイン」の登場人物

吉田修一著「ミス・サンシャイン」は、2022年1月に文藝春秋から発売された小説。

全281ページ。

初出誌は「文藝春秋」2020年10月号~2021年10月号。

 

これは色んな世代の人に薦めたいな、と思った一冊です。

面白くて悲しくて、優しい。そんな物語でした。

では、主な登場人物の紹介から。

 

岡田一心 主人公。大学院生。

石田鈴 昭和の大女優、「和楽京子」。

市井昌子 鈴の元マネージャー。

プク 鈴の飼い猫。

 

林佳乃子 鈴の親友。

五十嵐先生 一心のゼミの担当教授。

桃田真希 カフェの店員。

 

吉田修一「ミス・サンシャイン」のあらすじ

主人公の大学院生・岡田一心は、ゼミの担当教授の紹介で、かつての大女優(和楽京子、こと石田鈴)宅の荷物整理のアルバイトをすることになった。

 

うまくいかぬ恋愛をしていた一心だったが、手伝いをしながら鈴さんと会話するうち、気持ちに変化があらわれてくるー。

ふたりの出身地は、長崎県。

 

吉田修一「ミス・サンシャイン」の感想

著者の吉田さんは、長崎県のご出身。

この本を読み、長崎県内の学校で習う「戦争」の内容が私たちとは違う、ということを知りました。

原爆を投下された場所ですから、言われてみればそうかもしれませんが。

 

現代を生きている私は、どこか遠い所の昔の話、として捉えている部分もあるのです。(恥ずかしながら。)

数えきれないほどの悲しいこと、悔しいことがあったに違いないのに。

故郷を思う気持ちは、そこを離れて、そして時を経て、より強くなるのかもしれないと思うのです。

 

一心と鈴さんは、20代と80代。世代は違いますが、長崎県出身という共通点があります。

東京で暮らしていて同じ県の出身者と出会うというのは、それだけで親近感がわくのではないでしょうか。

 

さて。鈴さんには、長崎に住む佳乃子さんという親友がいました。

友情ってこういうことを言うのかな、というエピソードが描かれていてぐっときました。

特殊な状況においての話ではありますが、双方が相手を思う気持ちが強くて泣けます。

 

被爆した人間に待ち受ける、残酷な事実も描かれていますー。

 

吉田修一著「ミス・サンシャイン」背表紙

 

鈴さんの元マネージャーだった昌子さんも、いい人。クセの強い人かと思いきや、よくしゃべる、表裏のない正直な人で。

そういえばこの物語、はらわたが煮えくりかえるほどの「すごーく嫌な奴」が出て来ませんでした。ちょっと嫌な奴はいたけど。

 

どの時代も皆必死に、日々を過ごしている。

桃ちゃんだって、きっと一生懸命なんだろうな。(と今は思えるけど、若き日の自分だったら絶対に許せないタイプではある・笑。)

この桃ちゃん、一心いきつけのカフェ店員なのであります。彼女とのあれこれは、まあ、こういう恋の経験があっても良いのでは、と。

楽しいばかりではないのが人生。むしろ、嫌な事の方が多いような気がします。

それでも、生きていかねばならないのです。

 

最後に

一心(いっしん)、いい名前です。

由来が素敵すぎる!

この主人公、優しいんですよ。ほっこりヤロウなんです。

なんとなく、以前読んだ「横道世之介」を思い出しました。

今の私、優しさに飢えているのかもしれない…。

 

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ここのところ、ショックなニュースが続いたり、雨ばっかりで気持ちがざわざわしていたのだけれど、元気をもらえました。

生きていればきっと、いいことある…よね。

一心の妹、そして佳乃子さんが放った言葉を通して、生きることを考えさせられました。戦争は良くない、ぜったい。