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篠田節子「純愛小説」のあらすじと感想

篠田節子著「純愛小説」文庫本の背表紙画像

篠田節子「純愛小説」について

篠田節子著「純愛小説」は、2011年1月に角川文庫から発売された短編集。

全268ページ。

巻末の解説は、石井千湖氏。

 

4本の作品が収録されています。

どれも恋愛ものですが、一筋縄ではいかないストーリー展開。さすが篠田さん。

それぞれのあらすじと感想をまとめます。

 

篠田節子「純愛小説」のあらすじと感想

純愛小説

1話目は、表題作。

香織は、中学校時代から30年以上の友人である柳瀬から「妻から離婚を迫られている」と打ち明けられる。彼はいわゆる恋愛体質で、そのことが原因だというー。

出版社で働く香織は、取材先で、意外な相手と柳瀬との関係を知ることになる。

 

柳瀬さん、ハンターです。

しかしながら、子煩悩で家庭を大事にする。なんと器用な男だろう。

一方、香織は独身。

友人の柳瀬家を修復すべく、策を練るのですが、これが…。

善意って、おそろしい。

 

ラストシーンは、香織側の立場になって読むとゾッとしますが、妻の立場になってみると、全く違った感情に。

 

鞍馬

小学校の校長を定年退職したばかりの優子は、フリースクールを立ち上げる計画を立てていた。しかし、資金が300万円足りない。

実家の相続を放棄した優子だったが、そこに1人で暮らす姉の静子に援助を求めた。はっきりしない態度をとる姉。やがて電話もつながらなくなる。

訪ねてみると、そこは更地になっていた、というあらすじ。

 

実家が更地になっていたら。

腰を抜かすほど驚くに違いありません。

そして、姉の行方は?

65歳の彼女は独身で、何事も一人では決断できない性格だといいます。

 

姉が通っていたカルチャースクールのクラスメートに話を聞くと、仲良くしていた男性がいたとの証言が。

この男性に財産をーという展開なのですが、物語は途中から静子の視点に切り替わります。

「世間知らずの老女」という優子の見立てでしたが、実はそうではなかった。侮るなかれ。

 

優子と静子は、物事の捉え方が違っていました。

この姉妹に限ったことではないと思いますが。

ミステリーの要素が強くて面白かった◎

 

篠田節子「純愛小説」表紙
篠田節子「純愛小説」の目次

 

知恵熱

主人公は、2人の息子を持つ50代の男性。社会人の長男は家を出ており、大学生の次男までも家を出たいと言い、渋々認めた。

ほどなくして、息子と親しくしている先輩女性の存在を知る。妻には内緒で、楽器を介した3人での交流が始まるーというあらすじ。

 

大学生の身分ですし、息子を擁護するつもりはないのですが、主人公である父親の言動に対する違和感が始終ぬぐえませんでした。

息子の彼女に魅了されてしまう、50代の主人公。

 

いちいちイラっとしたのは、私だけかな。

どうしてあんなに、偉そうなのだろう。

親子と言えども他人ですし、時代も違いますからね。

 

蜂蜜色の女神

メンタルクリニックで働く医師、尚美が主人公。彼女のもとに、夫の浮気相談で女性がやってきた。

一回り年上の相手との浮気は「異常」だと訴える、その女性。

後日、尚美が夫から話を聞いたところによると。妻と別れる気はないが、体が反応してしまうのだとかー。

 

尚美は、妻の主張と夫の主張をそれぞれ聞いたわけですが、興味深かったです。それぞれの言い分は分かったけれど、対応するのは厄介な案件。

夫は発情期のオスそのもので、ちょっとおかしな状態。

 

浮気相手は、47歳です。

さぞや魅力的な女性なのだろう、と尚美も読者も想像するわけなのですがー!

なんという結末だろう。

「蜂蜜色の女神」は、渇望からくる幻想?

官能的な話でした。

 

まとめ

全4話、どれも面白かったです。

人の心って、複雑。

 

表紙に蜘蛛のイラストがあるのですが、何度か「ひっ!」と、本物と見間違える始末・笑。

虫が本当に苦手。嫌な季節がやってきます。