まつりパンライフ

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桐野夏生「燕は戻ってこない」のあらすじと感想

桐野夏生「燕は戻ってこない」背表紙画像

桐野夏生「燕は戻ってこない」の登場人物

桐野夏生著「燕は戻ってこない」は、2022年3月に集英社から発売された小説。

初出は「すばる」2019年3月号~2021年5月号。

全445ページ。

 

リキ 本名・大石理紀。29歳の主人公。

草桶基 バレエダンサー。43歳。

草桶悠子 基の妻。イラストレーター。44歳。

草桶千味子 基の母。バレリーナ。

青沼薫 生殖医療クリニックのスタッフ。

寺尾りりこ 悠子の友人。

 

テル リキの同僚。25歳。

ソム太 テルの恋人。

ダイキ セラピスト。

日高 リキの元上司。

 

桐野夏生「燕は戻ってこない」のあらすじ

都内の病院で、派遣社員として働くリキ。

同僚のテルから「エッグドナー」のバイトに誘われる。卵子を提供するための登録を行うのだという。

しかし登録時の面接でリキに提案されたのは、「代理母」だった。

 

依頼したのは、40代の夫婦。

リキは引き受けることにしたのだがー。

 

桐野夏生「燕は戻ってこない」の感想

物語のはじめで描かれる、貧困。都内で派遣社員として働く20代の女性たち(リキとテル)の、爪に火を点すようなつましい生活に、ここまでギリギリなのかと苦しくなりました。

リキは短大を卒業して地元で働いた後、東京に出てきています。

しかし現在貯金はなく、常に金欠。テルに至っては奨学金の返済もあり、さらに困窮。

この状況では、高額な報酬が支払われるという卵子の提供に前向き、というのも分からなくもないような気がします。

 

一方で、ある程度の資産を持ち、自然妊娠は難しいながらも自らの子供を望む者たち。

このような需要があるから、卵子の提供が行われているわけなのですが。

リキの場合は、代理母。卵子と子宮を提供する、というのです。日本では認められていないため、秘密裏に行われます。

 

主人公であるリキの他に、依頼人夫婦の視点から描かれる箇所もあり、不思議な気持ちになりました。

バレエダンサーの基は、どうしても自分の血をひいた子供が欲しい。対する妻の悠子は、自分とは血の繋がらない子供を、果たして本当に欲しいのだろうか、と葛藤。

確かに、これは揉めそう。

 

桐野夏生著「燕は戻ってこない」表紙

 

悠子の美大時代の友人、りりこが愉快な人物でしてね。

いや、愉快というか、わが道を突き進む芸術家というか。ちなみに、職業は春画作家。

そして、りりこと基の仲が、すこぶる悪い。笑っちゃうくらいに。

 

2人のバトルは、最初こそハラハラしていたものの、「次はどんなイヤミ合戦が繰り広げられるのだろう」と、ニヤついている自分がいました。

苦手(というか嫌い)な人に、ここまで露骨に嫌味を言えるって、才能ではなかろうか。基のような、勝手な思想を持つ人って多いような気がするんですよね。私の身近にもいますし。もう少し、相手のことを思って発言なり行動をして欲しいものです。

 

お金がなくて苦しむ者がいて、子供を授からなくて悩む者がいて。代理出産が、ビジネスとして成り立っている国もあるようですね。なんだかなあ。

 

先が読めない展開、そして心底驚いた結末。

このラスト、ぶったまげましたわ。

誰が想像しただろう。リキ、やるね。

 

まとめ

ぶ、ぶ厚い。

と思って読み始めたものの、家族が留守&面白すぎた!ということもあり、1日で読み終えてしまいました。もちろんその後、何度も読み返していて、なんとすごい本なのだろうと。

 

3月に、桐野さんが文化放送のラジオにゲスト出演なさっていました。

小島慶子さんが彼女の大ファンなのだとか。すごい熱量でした・笑。過去の作品にも触れていらして。そう、そうなんだよね、と頷きながら聞いていました。

また出て欲しいな。