まつりパンライフ

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江國香織「ひとりでカラカサさしてゆく」のあらすじと感想

江國香織著「ひとりでカラカサさしてゆく」背表紙画像

江國香織「ひとりでカラカサさしてゆく」の登場人物

江國香織「ひとりでカラカサさしてゆく」は、2021年12月に新潮社から発売された小説。

初出は「小説新潮」2020年4月号~2021年7月号。

全230ページ。

 

以前、ラジオ番組内で紹介されていた本です。

紹介していたのは、中瀬さんです。新潮社の。

彼女が紹介した本は、面白い!

期待通り、この作品もとっても良かったのでちょっと私も紹介してみよう、と思った次第です。

 

そうそう、今年の1月に江國さんがTBSラジオ「アシタノカレッジ」に出ていました。本作についても話していましたので、聞いてみてください。

番組公式のYouTubeに、アーカイブが残っています。

私、砂鉄さんを信頼していまして。いつかサイン会に行けたらいいな~。

 

では、主な登場人物から。(今回、かなり多め)

 

篠田完爾 86歳。秋田に移住。

重森勉 80歳。身よりなし。

宮下知佐子 82歳。

 

勇樹 知佐子の孫。33歳。獣医。

理保 勇樹の妻。トリマー。

踏子 知佐子の孫。作家。

陽日 踏子の隣に住む5歳。

茶谷守也 踏子の恋人。ボウリング場勤務。

宮下朗子 知佐子の娘。勇樹と踏子の母。スポーツクラブの厨房スタッフ。

 

河合順一 勉の知人。東欧雑貨専門店店主。

蕨田圭 勉の知人。神戸の喫茶店店主。

木下藍洙 勉の元教え子。

 

篠田東洋 完爾の息子。

篠田葉月 東洋の娘。デンマークに留学中。

竹井翠 完爾の娘。

 

(登場人物、実はまだまだ出てくるのですがこの辺で。)

 

江國香織「ひとりでカラカサさしてゆく」のあらすじ

80代の男女3人が、都内のホテルの一室で大晦日に猟銃自殺をした。

計画的な自殺で、遺書も残されていた。

彼らは皆、元編集者で長年の付き合いがあった。

 

残された家族、知人らは「どうして?」という思いだった。

一体なにがあったのだろう。

3人とその周囲の人間たち、それぞれの思いが描かれる。

 

江國香織「ひとりでカラカサさしてゆく」の感想

いきなり、80代の自殺から始まる話。

ではあるのですが、ものものしい雰囲気ではなく、ずっと心地よい空気感が漂っている物語でした。ミステリー小説ではないのです。

 

3人は、最後の日にホテルのバーラウンジで過去をふり返り、昔話(共通の知人についての話、皆で訪れた思い出の場所での出来事。)を。

悲観的な発言をする者はなく、むしろ穏やか。

 

死後の段取りもすでに決めてあったり、身辺整理も済ませていたり。

彼らの、こわいくらいの潔さ。

 

この本、語り手が短いスパンで変わります。

皆、故人と何らかのつながりを持つ人。

知人、家族、かつての教え子たち。

故人との思い出を振り返りながらも、自分のまわりのあれやこれやも描かれているのです。

彼らにも現在の自分の生活があって、家族や親戚、恋人が存在しているわけですので。

 

江國香織「ひとりでカラカサさしてゆく」表紙
江國香織「ひとりでカラカサさしてゆく」扉頁

 

楽しませてもらいました。

とても、面白かった。

 

故人を通じて知り合うことになった、他人同士のやりとりが秀逸でした。

いまいちテンポがずれている、というか、かみ合わぬ会話もあったりして。

 

やたらと大人びている5歳児、かわいかった。

義理の家族との、ちょっといびつにみえる親戚付き合いに、深く頷いてしまったり。

 

ある種の「常識のなさ」に苛立つ人物がいたり、何十年ぶりかの再会を果たす親子がいたり。

ひとりひとり、それぞれを生きている登場人物に癒されたりギョッとしたり、色々な感情がうまれました。

 

最後に

一度目に読んだときは、「今、誰の語りのパートだろう?」とメモを確認しながらだったのですが、再度よみかえしたときには「○○の息子ね」とか「○○の知人か」、とすんなり受け入れることが出来ました。

なにしろ、語り手が多いものですから。

その分、それぞれの人生が描かれていて全く飽きがこないのです。

 

江國さんの本、久々に読みました。

文章が美しいですね。