小池真理子「アナベル・リイ」の登場人物
小池真理子著「アナベル・リイ」は、2022年7月に角川書店から発売された長篇小説。
全353ページ。
初出は「小説 野性時代」2020年2月号~2021年9月号。
久保田悦子 主人公。
杉千佳代 舞台女優。
飯沼一也 フリーライター。
富永多恵子 バー「とみなが」のオーナー。
シゲタ 多恵子の恋人。
ようやく、秋を感じられるような季節になりました。
最近読んで特に面白かった、小池真理子さんの新刊の紹介です。
ホラーなので、こわがりの方は日中に読んだ方が良いかもしれません。
私は寝る前にこの本を読んで、まんまと悪夢を見ました。(本当。)
小池真理子「アナベル・リイ」のあらすじ
バー「とみなが」でアルバイトをしていた久保田悦子は、常連客の飯沼が連れてきた千佳代と親しくなる。
千佳代は年上のフリーライター・飯沼と結婚するも、死亡。
ほどなくして、悦子と「とみなが」のオーナー・多恵子は、千佳代の亡霊をみるようになるー。
小池真理子「アナベル・リイ」の感想
終始、うすら寒い感じが漂う話でした。
私自身は霊感とか全くありませんし、今までそういう類のものを視たためしがないのですが、存在するかもという見解。
それが視えちゃう人も、いるのだと思います。
ただ、自分には視えないものだけに、普段は存在しないものとして生活しています。
1978年、主人公が26歳の頃からの物語です。
主人公は美大を卒業後、イラストレーターを目指している久保田悦子。
両親は海外にいるため、練馬区の大泉学園の広い家に一人暮らし。
物語の設定とはいえ、この時点で羨ましい!という感情がわいてきてしまう。
バイト先は西荻窪にあるバーで、オーナーの多恵子は34歳。飾らない人柄の親切な人物。関係も良好。悦子からすれば、年の離れたお姉さんといったところでしょうか。
多恵子が、密かに思いを寄せていたのが客の飯沼。
しかし彼は、店に千佳代という舞台女優を目指す女性を連れてきます。
千佳代は悦子と同い年ということもあり、彼女を慕い、親しくなっていきます。
飯沼は「誰もが認めるいい男」です。めでたく、千佳代と夫婦になるのですがー。
ここから先、何とも言えない不気味な雰囲気が漂い始めるのです。
突然やってきた「千佳代の死」もそうですが、彼女が亡霊となって出てくるのですから。
この手の話を好まない人でも、小池さんの文章の圧倒的な美しさを目にしたくて読む人も、いるのではないでしょうか。
そして、読後感は悪くないと思います。
何度読み返しても情景が頭に浮かび、怖いのです。
けれど、なぜか読み返してしまうという大満足の一冊でした。
その他あれこれ
最近、手に取る本の傾向が変わってきたかも、という実感があります。
というか、前ほど小説を読まなくなってきたなあと。
本を読むことは日常的に行っているのですが、感想を書けるような内容のものではなく、答えのないことをひとりで考える、みたいなやつです。~論、みたいな。
あとは、エッセイ。
学生時代から変わらず、ずっと好きなジャンルももちろんあるのですが、「この人の作品は絶対に買おう」と決めていたにもかかわらず、なんとなくしっくり来なかったり。
前ほどの満足感が得られなかったり。
これってなんなの?と自分に対して戸惑いが大きいです。
そんな中でも、小池真理子さんは別格。
ずっとずっと、読み続けていきたい作家さんのひとりです。
いつ読んでも、話の中にすーっと入っていける。
美しい文章。
どんな精神状態のときでも楽しめるのです。