中島京子「ゴースト」について
爽やかな陽気、のはずの5月ですが暑すぎますね。
ここ神奈川は、すでに暑すぎます。
室温が30度をこえたりして、あわててエアコンの試運転をしてみたり、扇風機やらサーキュレーターを組み立てたりして、てんやわんやです。
そして、紫外線がギラギラ!
日傘と日焼け止めでしっかり対策せねば、と思っている次第です。
室内でも、日焼けしますからね…。
なんだかぐったりしてしまったので、今日は家で大人しく、久々になってしまったブログの更新でもしようかと思います・笑。
直近で読み終えた、中島京子さんの短編集の紹介です。
中島京子著「ゴースト」は2020年11月に、朝日新聞出版から発売された短編集。
全239ページ。
初出は「小説トリッパー」・2015年冬季号から2017年夏季号までの連載。
単行本化にあたって加筆修正したとのことです。
単行本の発売は2017年8月。
全7話の短編集ですが、印象深かったものをいくつか紹介します。
中島京子「ゴースト」のあらすじと感想
原宿の家
友人宅で、とある男性(W)が語ってくれたという幽霊譚。
80年代の中頃、大学生だったW。彼は不動産屋のアルバイトで、都内の一角を個別訪問し、アンケート調査をすることに。そのときに、原宿に建つ一軒の家で不思議な経験をしたー。
Wが語った話の登場人物達として…
・10歳くらいの、ワンピースを着た少女
・家の管理を任されているという、ノリコと名乗る若い女
・痩せた初老の女。
ミステリアスな女性たち。
皆、独自の雰囲気をまとっています。
彼女たちは、一体?
何度も読み返しては、あれやこれやと考察。
お気に入りの一作。
実はWが訪ねたこの家は、GHQの接収住宅であることが後に判明します。
30年経って、彼が出した結論にも唸りました。
きららの紙飛行機
主人公は、自分を幽霊だと認識しているケンタ。
ケンタは、自分の意思とは関係なくふいに「この世」に現れる。そのタイミングに、規則性はないのだという。現れるのは決まっていつもの地下道であり、近頃は「この世」に滞在する時間も一日くらい、という。
たいていの人間にはケンタの姿が見えない。声も聞こえない。しかし今回の出現で出会ったきらら、という女の子には彼が見えるのだったー。というあらすじです。
ケンタが戦争で両親と妹を亡くしていた、という事実。
きららがネグレクト状態にある、という現実。
ケンタがこの世に現れるたびに目にする、世の中の変遷にも興味がわきます。
空腹を満たしたり銭湯でさっぱりしたり、それなりに楽しみを満たしている一方で、圧倒的な孤独を感じました。
きららのようなケンタと会話できる存在はまれで、基本的にケンタの姿は確認できないわけなので。
まーったく霊感がない私ですが、きららのような特異な力を持つ人って、本当にいるのかもしれないな、とふと考えたりしました。
ケンタの優しさに、心があたたかくなった一作でした。
まとめ
今回はざっと2編だけの紹介でした。
第2話の「ミシンの履歴」は、古道具屋に置いてあるミシンの歴史を追う話。
第4話の「亡霊たち」は、主人公の千夏が同居する曽祖父の影響で亡霊を見るようになった話。大正12年生まれの「おじいちゃん」は、戦争を経験した人。
そのときの経験は、決して彼の中から消えることはなく。
曾孫の千夏からみた「おじいちゃん」は、死の間際までどんな思いで過ごしていたのだろう。ラストは涙しました。
幽霊にまつわる、様々な話が収められた1冊。
夜に読んでも大丈夫でしたよ・笑。
そして、どの話にも通じるテーマは「戦争」。
戦争について考えさせられる事実が描かれています。
私もこの本を読みながら、いくつかの史実を検索して読み耽ってしまいました。