桜木紫乃「人生劇場」の登場人物
今週は急に暑くなって、体も心もびっくりしているところです。
今って、6月ですよね!?
さて、今日紹介する本は、今年発売された桜木紫乃さんの長編小説。
主人公と共に月日が流れていくさまが面白くて、一気に読み進めることができた壮大な作品でした。
桜木紫乃著「人生劇場」は、2025年2月に徳間書店から発売された小説。
初出は「アサヒ芸能」2023年10月12日号~2025年1月2・9日合併号。刊行にあたり大幅に加筆修正したとのこと。全460ページ。
主な登場人物の紹介です。
新川猛夫 主人公。新川家の次男。
新川彦太郎 猛夫の父。蒲鉾職人。
新川タミ 猛夫の母。
新川一郎 新川家の長男。
新川康男 新川家の三男。
新川利夫 新川家の四男。
新川照子 新川家の長女。
新川和子 新川家の次女。
新川須江 新川家の三女。
カツ タミの姉。猛夫の伯母。旅館の女将。
トキ カツの旅館の仲居。
駒子 カツの旅館の仲居。
藤堂 床屋の店主。
鳥原 藤堂の兄弟弟子。
杉山里美 猛夫の妻。
杉山ハギ 里美の母。
池田幸平 猛夫の弟子。
新川春生 猛夫夫妻の長女。
新川実生 猛夫夫妻の次女。
桜木紫乃「人生劇場」のあらすじ
昭和13年、新川家の次男として室蘭に生まれた猛夫。
彼には兄弟がたくさんいて、兄からのいじめ、母親からのあしらわれ方に疎外感を感じていた。
そんな中、近くに暮らす伯母のカツが、猛夫を引き取りたいと申し出た。そして、カツの経営する旅館での暮らしが始まった。
猛夫はカツの反対を押し切り、高校には進学しない事にした。
そして、札幌の理髪店に奉公することを決めたはずだったがー。
桜木紫乃「人生劇場」の感想
猛夫の人生は、波乱万丈の生涯と言っていいと思います。
昭和13年の生まれですと戦時下の記憶も残っているでしょうし、貧しい時代を生きたのだろうと想像がつきます。
幼少期にお腹いっぱいご飯を食べられないというのは、当時としては珍しくない状況だったのでしょう。
そして新川家では、母親(タミ)が長男(一郎)を溺愛しています。そしてその一郎は猛夫に対し、執拗ないじめを繰り返すのです。タミは知らん顔です。
こうなると、猛夫の居場所はありません。
そこへ手を差しのべてくれたのが、伯母のカツです。食堂を経営し、夜は旅館の女将として働くカツ。タミと姉妹とは思えないほど出来た女性です。
カツの強い希望で猛夫を引き取ることになったわけなのですが、これは両者にとって良かったのではないかな、と思いました。
居心地が悪い実家を出た猛夫でしたが、家族とわだかまりを残したままの関係は、その後も続くことに。
床屋の職を得るべく、修行することに決めた猛夫。紆余曲折あり、ついに自分たちの店を持つまでになります。
しかし、次から次へと新たな問題・事件が起きて「凪」の時間はほぼなくて。夫婦間の諍い、女性関係、ギャンブル…。
ついに猛夫は、ラブホテルの経営に乗り出します。
出会いと別れの繰り返し。
個人的には、別れの描かれ方が印象的でした。
残された側の猛夫の気持ちを考えると、ずしんと来ます。
まとめ
降りかかってきた災難もあれば、自分で招いたトラブルもあり、読み手としては、今度はそうきたか!と驚きの連続。
猛夫の人間としての弱さや、職人としての誇りはいやというほど伝わってきて、苦しくなったり応援したくなったり、気持ちが揺れました。
猛夫の思い切りの良さ、みたいなものは自分は持ち合わせていないので、小説を読むことは違う人間の一生を追体験できて有意義な時間を過ごせる体験だと感じました。