塩田武士「踊りつかれて」の登場人物
いやあ、暑いです。
徒歩移動なのですが、昼間の外出は危険ですね。
さて、最近読んで特に面白かった本の紹介。
賞の候補作にもなりましたし、書店でも目に付くところに陳列されている、話題の一冊です。
塩田武士著「踊りつかれて」は、2025年5月に発売された小説。
初出は「週刊文春」2023年6月22日号~2024年8月8日号。単行本化に際して改稿したとのこと。全471ページ。
天童ショージ お笑い芸人。
奥田美月 元歌手。
瀬尾政夫 音楽プロデューサー。
久代奏 弁護士。
山城新伍 奏の勤務先の所長。
青山勝治 奏の先輩弁護士。
天童静香 ショージの妻。
奥田美咲 美月の叔母。
山田健 大学生。
牧村志保 歯科医。
小谷義昭 元週刊誌の記者。
藤島一幸 大学職員。
塩田武士「踊りつかれて」のあらすじ
「枯葉」なる人物が書いた「踊りつかれて」というブログ。
サイトに表示された「宣戦布告」という記事と、それに続く「犯罪者たち」の記事。
「犯罪者たち」の記事には芸能人の誹謗中傷コメントを書いた83人の氏名、生年月日、住所、会社、学校等の個人情報が記されていた。
枯葉なる人物は、何故突然このような記事を公開したのか。
目的は、あったのかー。
塩田武士「踊りつかれて」の感想
書き出しの「宣戦布告」に、圧倒されました。
これから何が始まるのだろう、と。
芸人の天童ショージが不倫→炎上し、自死という選択をしてしまった悲しい出来事。
そして、80年代に歌手として活躍していた奥田美月は、週刊誌の嘘の記事と「暴言テープ」の流出で、姿を消すことになってしまった。このふたつの案件について、宣戦布告内で触れられています。
天童ショージの件を炎上させた加害者、および奥田美月の記事を書いた者たちへの宣戦布告は、彼らの行いを赦してなるものか、というただならぬ決意を感じます。
第一章では、数名の加害者側の立場から描かれています。炎上させるに至った経緯や、自分の個人情報を公表されてしまったことによる動揺、そして周囲の反応。
加害者らは結果的に逆側の立場になってしまい、日常生活を送ることが困難になったのです。(誹謗中傷を行う前に、自分が相手側だったらどんな気持ちになるのか?を考えて欲しい…。)
個人情報を公開した人物(枯葉)は、名誉棄損で逮捕されます。その弁護を担当することになったのが、弁護士9年目の久代奏。彼女は、天童の中学の同級生でした。
登場人物たちの、過去の意外な接点が明らかになっていくのです。なので、ミステリを読んでいるときのような高揚感を感じたりもしました。
奏自身の中にある天童との思い出や、弁護士としての矜持、美月のデビューまでの生い立ちなどが丁寧に描かれていて、人物像が立体的に浮かび上がってくるのも面白かったです。
現代ならではの深い内容の話だと思います。
ほろりとくるシーンなんかもあって、なんだろう?この感じ。
読みごたえのある一冊なので、ぜひ読んでみて下さい。
それにしても、所長の名が山城新伍!笑。
何十年ぶりに目にしただろう。昔、テレビに出てた人ですよね。
重苦しい題材に、悲しい過去の話なんかもあって気が滅入る箇所もありますが、ちょっとした小ネタも含まれておりまして、読後感は悪くなかったです。
最後に
スキャンダルがたくさん盛り込まれたこの作品が、週刊文春に連載されていた、というのにびっくりしています。
思い切ったなあ、と。
本のカバーをめくると、にくい演出が◎
凝ったデザイン◎
今回の直木賞は、該当作なしとの結果でした。
寂しいような気もしますが、どの作品も面白いので全部読んでみては、と言っている方がいました。
どれから読もうか、迷い中です。
