桜木紫乃「家族じまい」の登場人物
今日は特に暑い気がするのですが、夏バテしていませんか?
食欲もそれほどわかないので、フルーツばかり食べて過ごしている日々です。
今日紹介する本は、北海道で暮らす、ある家族を描いた小説です。
桜木紫乃著「家族じまい」は、2020年6月に集英社から発売された小説。
初出は「小説すばる」2019年1・3・5・7・9月号。
以下、登場人物の紹介です。
智代 美容師。48歳。
啓介 智代の夫。
乃理 智代の妹。44歳。
徹 乃理の夫。
サトミ 智代と乃理の母。
猛夫 智代と乃理の父。
片野涼介 啓介の弟。55歳。
片野うた子 涼介の母。
陽紅 良介の妻。28歳。
聖子 陽紅の母。
門脇紀和 サックス奏者。
登美子 サトミの姉。82歳。
萌子 登美子の長女。60歳。
珠子 登美子の次女。58歳。
桜木紫乃「家族じまい」のあらすじ
妹からの電話で、母親が認知症を患っていることを知る智代。
子育てにまだ手のかかる妹は、既に子供たちが家を出て暮らしている姉・智代に対し、実家の様子を見てきてほしいという。
実家との付き合いをほとんどしてこなかった智代だが、向き合わなければならない状況にー。
桜木紫乃「家族じまい」の感想
第1章から第5章までで構成されているこのお話は、書き手が全て異なります。連作の短編集とも言えるし、長編小説ともいえるような。
渦中のサトミと猛夫夫妻の様子が、女性たち(近しい関係の人物・たまたま居合わせた人物)の視点で描かれています。
40代の娘ふたりは姉と妹でタイプが違います。そして、それほど仲の良い姉妹というわけでもなさそうなのですが、親のこととなると協力しないわけにもいかず。
介護の問題は、解決しなければならない問題が多々あり複雑。
娘たちとはいえそれぞれが家庭を持ち、働きながら暮らしているので、すぐに駆け付けることもままらないようですし。
さらに、皆が北海道内に暮らしているは言え、江別市に暮らす智代、函館に暮らす乃理、釧路に暮らす両親、という具合。
北海道の地理に明るくない私は、地図を眺めて想像を働かせました。これは簡単に移動できない距離!
認知症を患うサトミの面倒をみている猛夫も高齢なため、彼になにかあった場合も問題。そこで、二世帯で暮らすのはどうかと言い出す妹の算段…。この妹の乃理は、アルコールにおぼれていくのですー。
様々な夫婦関係の関係性も、読んでいて面白かった箇所のひとつです。
子供が巣立って、夫婦二人で静かに暮らす智代。子育て真っ最中の乃理のところは、男女の関係というよりは「家族」に。
その他にも、親が強引に結婚相手を決めてしまい、本当に結婚してしまう夫婦も出てきます。ここは、奇妙なルールで成り立っている不思議なカップル。
認知症を患った人を介護するのは、家族だけでは難しいなという印象を受けました。
面倒をみる側も、心身ともに出来る限り負担なく生活できるといいのでしょうけれど。
ラストの「登美子」の5章が特にぐっときました。
登美子はサトミの姉なのですが、二人の娘を産み育て、現在はシングルで自立して暮らす高齢者。彼女の強さと優しさが沁みました。
最後に
この本の登場人物の猛夫とサトミは、先月紹介した「人生劇場」内に出てくる猛夫と里美。偶然、この2冊を読んだ時期が近かったため、面白いつながりに気が付くことが出来ました。
80代の猛夫は相変わらず意地っ張りで無鉄砲なところがありますが、妻の面倒をみることになるとは。
人生劇場を読み終えたあとには、想像もつかない流れです。
娘たちには面倒をかけたくない、という猛夫の気持ちには、彼らしい考え方だなと妙に納得しました。
