桜木紫乃「起終点駅」について
わが家は只今、お盆休み中。猛暑はなんとか免れているものの、天気が安定しなくて特に遠出することもせずに過ごしています。
家にいても暇&暑いので、読みかけの本を持参→朝の涼しいうちに電車に乗り、近場のカフェで読書、という日々です。夕方になると、ほんの少し秋の気配?が感じられるような気がします。
今日紹介するのは、連休前半に読んだ中の面白かった一冊です。
桜木紫乃著「起終点駅(ターミナル)」は、2012年4月に小学館から発売された短編集。(2015年3月に文庫化。)6本の短編が収められています。
いくつかの章のあらすじと感想をまとめてみました。
桜木紫乃「起終点駅」のあらすじと感想
かたちないもの
笹野真理子は、かつての恋人・竹原の納骨式に出席するため、函館の外人墓地に来た。
竹原の立会人を任された神父・角田から、生前の竹原とのやりとりを聞くことになった真理子は、思ってもいなかった事実を知り、困惑するー。
現在39歳の真理子は、東京都内で仕事に邁進する日々を送っています。
10年前に未練を残したまま別れた恋人の死を知り、どのような気持ちになったのだろう。想像してみようものの、うまくいきません。
未練、という思いが自分の中に薄いせいかもしれません。
しかし、思い切りのよさを持つ真理子の生き方、かっこいい!
海鳥の行方
山岸里和は、新人の新聞記者。配属先の釧路支社で、デスクの紺野に嫌味を言われる屈辱的な日々を送っていた。
紺野と「闘おう」と決めた里和。不発弾発見の一報を受け、現場に向かうことに。
現場近くの防波堤を歩く里和は、ある男性の釣り人と会話を交わしたのだがー。
新聞記者も、職場の人間関係が大切なのか…と少々複雑な気持ちになりました。
里和は人に頼ることをせず、可愛く振る舞うこともせずに過ごしている様子。しかし、正直で優しい女性だというのも事実。
学生時代の恋人とのいざこざも絡んできて、社会人は悩みが尽きないなという思いに駆られました。
起終点駅(ターミナル)
鷲田完治は、国選弁護しか引き受けない「変わり者」の弁護士。
今回担当することになった案件は、椎名敦子という女性の覚醒剤使用事件。被告人の椎名からは、反省の色が見られない。
その彼女が、鷲田の法律事務所に挨拶にやって来た。そして、捜してほしい人がいるので手伝ってほしい、というー。
一人で暮らす鷲田は、孤独な生活の中で料理に楽しみを見出だすようになり、なかなかの腕前。(この箇所の描写が、実に美味しそう)
流れで、椎名に料理を振る舞うことに。彼女のように素直に美味しい、と言ってくれるのは嬉しいものです。
鷲田には、5歳のときに別れたきりの息子がいます。
彼からの披露宴の案内状が届いたことは、複雑な思いがにじんでいるように感じました。
国選しか引き受けない、と自らが決めたのも訳あってのことで、この回想シーンは辛い。
椎名は鷲田に懐き、関係性も構築されかけたか、というところでちょっとした事件が起こり、話が急展開します。
表題作、ということもあってか、特に印象的な章でした。
潮風の家
久保田千鶴子は、30年ぶりに北海道の故郷を訪ねた。寺で永代供養の手続きをするためである。
郷里の唯一の知人・星野たみ子に連絡すると、うちに泊まっていけという。たみ子は、亡き母の友人でもあったー。
千鶴子が故郷にいられなくなったのは、弟が事件を起こし逮捕されたからでした。彼は、勾留中に命を絶ったのです。
狭い町ですから、千鶴子の居場所はありません。
24歳で町を出た千鶴子。自らを、流されながら生きてきたように思う、と振り返っています。そういう生き方が出来るのも、軽やかで良いように思いますが。
それにしても、30年ぶりに知人に会うというのは、お互いどんな反応をすればいいのやら。
たみ子のような優しい人が近くにいてくれて、良かったです。
彼女も彼女で、辛い過去を持っているのですが。
まとめ
自宅以外での読書も、気分転換になっていいものですね。
ただ、好きな時に昼寝できないのが唯一の欠点かもしれません。
