桜木紫乃「氷の轍」について
雪こそ降らないものの、寒い日が続いています。
そして今シーズンも、しもやけに悩まされています。
気をつけていても、なってしまうんですね。手の指の何本かがパンパンに腫れて痛痒い…。困ったものです。
今はドラマや映画等の映像作品は疲れてしまって、ラジオと本ばかりの生活を送っています。映像作品は、今の私には情報が多過ぎるのかもしれません。
去年の年末から群さんのエッセイにはまり、あれやこれやと手当たり次第読み進めつつ、同時進行で小説を読む日々です。
そんな中最近、特に面白かったと感じたミステリー作品を紹介します。
桜木紫乃著「氷の轍」は、2024年6月に講談社文庫から発売された長編小説。(単行本の発売は、2016年9月。)
全413ページ。
主な登場人物の紹介です。
大門真由 刑事。30歳。
大門史郎 真由の父。元刑事。
大門希代 真由の母。
片桐周平 警部補。
松崎比呂 巡査部長。
滝川信夫 被害者。元タクシー運転手。80歳。
米澤仁志 米澤蒲鉾店・2代目社長。
米澤小百合 仁志の妻。
米澤太一 米澤家の息子。
米澤宏美 仁志の上の姉。
米澤よし美 仁志の下の姉。
兵藤恵子 保険屋。
加藤千吉 小百合の養父。
行方佐知子 劇場の初代経営者。
桜木紫乃「氷の轍」のあらすじ
釧路の海岸で、後頭部の頭蓋骨が陥没した状態の高齢男性の遺体が、釣り人によって発見された。死後1日から2日経っており、所持品・遺留品はない。
ほどなく、被害者は5年前までタクシー運転手をしていた80歳の滝川信夫と判明。妻子はなく、札幌でひとり暮らしをしていた。
道警釧路方面本部刑事課の真由は、定年まであと3年の警部補・片桐とコンビを組み、事件の捜査に当たることになった。
被害者の自宅アパートの捜索を命じられた2人は、徐々に事件の真相へと近づくー。
桜木紫乃「氷の轍」の感想
真由は、被害者の発見時の服装に違和感を覚えます。上着が必要な季節に、なぜ?
また、被害者の部屋で見つけた厚紙の状態から、手紙を書く習慣があったのでは?と推察。そして北原白秋の詩集・白金之独楽の意味。
近くに暮らす被害者の元同僚に話を聞いたところで、糸口を見つけます。
わずかな手がかりからの考察の過程が、ミステリーの醍醐味だなあと感じます。
被害者が、旅先で訪れていた蒲鉾店。
ここから、事件が思わぬ方向へと進みます。
幾度も足を運び、話を聞くなかで見つけ出した小さなとっかかり。
捜査上にあがってきた、青森県の地名。登場人物らの意外な過去や生い立ち。
さて、主人公である真由・大門家の親子関係は少々複雑です。
真由は父・史郎の実の娘ですが、母・希代との間に血の繋がりはありません。
史郎が外でつくった子供を、養女として育てたのです。
真由が高校に上がるときに、その事実を知ることに。心底驚いた真由でしたが、希代は「誰が産もうと娘は娘」という態度でしたし、その後も取り乱すことなく日々は続いたのです。事実を受け入れた2人の、互いを思いやる気持ちに、強さと優しさを感じました。
一方、父の史郎は脳梗塞で倒れて1年。左半分の感覚を失い、リハビリ中の身。通いで世話をする希代。事件とは直接関係ないのですが、真由と生活を共にする希代の存在は大きいと察します。
犯人の動機は身勝手であり、許されるものではありません。
ただただ、悲しい。
本作には、芯の強い女性らが沢山登場します。試練の乗り越え方を垣間見れたことが、学びにもなりました。
まとめ
桜木紫乃さんが描く家族の形って、常々深いなあと感じ入るばかりなのですが、今回はそれに加えてミステリーも加わっておりまして。
出だしを読み始めた段階で、これもう絶対面白いじゃん!と胸が高鳴りました。登場人物それぞれの人間ドラマがとても良かったです。
