まつりパンライフ

家で焼いたパンと読んだ本の備忘録、愛用のキッチングッズの紹介をしています

三浦しをん「木暮荘物語」のあらすじと感想

三浦しをん「木暮荘物語」文庫版・背表紙

 

三浦しをん「木暮荘物語」の登場人物

三浦しをん著「木暮荘物語」は、2014年10月に祥伝社文庫から発売された連作短編集。

全286ページ。

 

三浦しをんさんの著作が好きです。

この本、読んだ?読んでない?

…読んでない!ということで、さっそく読んでみました。

 

最近、装丁にひかれて選んだ本がいまいちだったり、評判が良さそうだったので読んでみたものの、しっくりこなかったり…ということが続いていました。

その方の作品を読むのは初めてだったので、私とは相性が良くなかった、と思うようにしています。

 

もしくは、読む時期が違う。

何年後かに読めば、もしかしたら違った感想を抱けるかもしれないという淡い希望を抱き、本棚の奥の方へ。

 

そんなことが続いていたのですが、三浦しをんさんがぶち破ってくれました。

この「木暮荘物語」、とても面白かった!

どうして未読だったのだろう?

 

なかなかにインパクトがある内容なので、小田急線ユーザーの私は「世田谷代田」を通過するとき、あの世田谷代田、とそわそわしてしまいそう。

 

本作品は、「木暮荘」をめぐる7編の連作短編集になっています。

木暮荘は、世田谷代田駅から徒歩5分のところにある、木造二階建ての集合住宅。

 

あらすじと感想の前に、主な登場人物を記します。

 

坂田繭 203号室の住人。花屋の店員。26歳。

伊藤晃生 繭の恋人。

瀬戸並木 繭の昔の恋人。

佐伯夫妻 繭の勤務先の夫婦。花屋と喫茶店を経営。

木暮 「木暮荘」の大家。

神崎 201号室の住人。サラリーマン。

光子 102号室の住人。女子大生。

 

三浦しをん「木暮荘物語」のあらすじと感想

シンプリーヘブン

木暮荘の住人・繭が恋人といるところへ、昔の恋人・並木がやってくる。

という、平常心ではいられない状況…のはずが、そうはならず奇妙な展開が繰り広げられる、という章。

 

並木は繭に何も告げずに、3年も(!)姿を消したわけなので、何を今さらとなりますわな。

新たな恋人とも順調ですし。

※「シンプリーヘブン」はバラの名前。

 

心身

木暮荘の大家・じいさんの話。

これは、あらすじが書きにくい。

 

70歳を過ぎた木暮さんが、性欲をもてあまして困る、という話。

これは個人差があると思われますが、ふとしたきっかけにより欲望に火がついてしまうものなのかもしれないですね。どうなのかな。

 

柱の実り

主人公は、トリマーの美禰。

世田谷代田駅ホームの柱に、不自然な突起物があることに気が付く。

それは日々大きくなるが、客は誰も気にする様子がないーと思っていたら、ある男が声をかけてきた。というあらすじ。

 

これ、好きだなあ。最高◎

ニヤニヤしながら読み進めるも、途中、うわーんとなる箇所もありつつ。

 

三浦しをん著「木暮荘物語」文庫版の表紙

 

黒い飲み物

佐伯夫妻の話。

繭が主人公となる章で登場する佐伯夫人は、物わかりの良い大人という印象を受けました。

が、まさか彼女の心の内がこんなことになっていたとは思いもよらず。

 

夫は異様に無口な人。そして、秘密があったー。

佐伯夫人の嗅覚がすごいと思った。色んな意味で。

 

木暮荘の住人・神崎が、女子大生の生活を覗き見するという章。

 

完全に犯罪だけれど、コミカルで面白い。

食事やムダ毛処理といった様子を見物しては、だらしない暮らしぶりに悪態をつく神崎。

お前、どの立場で!となるが、最後はちょっといい終わり方。

 

ピース

覗き見されていた女子大生・光子の章。

大学の友達が生んだ赤ん坊を、一時的に預かることになった光子。

彼女の生い立ちを知ると複雑な気持ちになるが、神崎の言葉にグッと来てしまう。

 

嘘の味

ラストの主人公は、並木。

繭のことを忘れられない彼は、ストーカー行為をしてしまう。

しかし、虹子という女性に声をかけられ、彼女の住まいで共同生活を送ることになったーというあらすじ。

 

並木の、「共感と観察」に対する考察も鋭いが、虹子の特技がスゴい。

「嘘の味」(=タイトル)が分かる、という特技。

虹子の正体も、想定外。

 

まとめ

先日、岸本佐知子さんのエッセイ集「死ぬまでに行きたい海」を読んでいたときのこと。

 

www.matsuripan.com

 

「世田谷代田」という章があり、そこで「三浦しをんさんの木暮荘物語の世田谷代田」というようなことが書かれていたのです。

そこからチョイスした一冊です。

 

なるほど。

確かに「木暮荘物語」を読むと、世田谷代田駅に思い入れが生じてしまうのも分かるような気がします。