まつりパンライフ

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天童荒太「巡礼の家」のあらすじと感想

天童荒太著「巡礼の家」背表紙画像

天童荒太「巡礼の家」についてと登場人物

天童荒太著「巡礼の家」は、2019年10月に文藝春秋から発売された長編小説。

全367ページ。

 

初出は、オール讀物。

掲載は2018年11月号~2019年7月号。

 

主な登場人物の紹介です。

 

鳩村雛歩 主人公。15歳の中学生。

鳩村鹿雄 雛歩の兄。自衛隊に入り、雛歩とは離れて暮らす。

 

鷺野まひわ 「さぎのや」の78代目の女将。

鷺野千鶴 「さぎのや」の79代目の亡き女将。

鷺野鶏太郎 千鶴の夫。

鷺野美燈 「さぎのや」の80代目の女将。

 

鷺野飛朗 弁護士の卵。

鷺野こまき 飛朗の5つ違いの妹。看護師の卵。

 

カリン さぎのやのスタッフ。おかっぱ頭。 

マリア さぎのやのスタッフ。大柄で陽気な外国人。

ショウコ さぎのやのスタッフ。白髪の小柄な女性。

イノヒコ さぎのやのスタッフ。通称「イノさん」。

 

トミナガ 医師。

サチオ  トミナガの助手。戸籍上は女性だが、男性として生活。

若葉 飛朗の幼なじみの芸者さん。福駒。

 

天童荒太「巡礼の家」表紙の装画

 

天童荒太「巡礼の家」のあらすじ

「巡礼の家」のあらすじを簡単に説明します。

 

物語の舞台は、愛媛県松山市。

道後温泉の近くに「さぎのや」という宿がある。

 

「さぎのや」の始まりは、サギが人間や生き物たちを迎え、力づけて生きる力を蘇らせる役割を果たすー。

というものだという。

 

そこへ運ばれたのが、15歳の少女・雛歩。

 

個性豊かな「さぎのや」のスタッフたちや心優しい女将に世話をされ、雛歩は徐々に自分を取り戻していく。

 

天童荒太「巡礼の家」の感想

「巡礼の家」の率直な感想として言えることは、心があたたかくなる物語だということです。

 

主人公の少女・雛歩がさぎのやに迎えられ、あたたかく見守られ、次第に打ち解けていく様子は読む手を止めさせません。

 

登場人物たちによって、雛歩の心がほぐれてゆくさまを存分に楽しむことができました。

スタッフ皆それぞれに役割があって人々を迎える、さぎのやのような宿が本当にあったらいいな、なんて。

 

様々な思いをかかえたお遍路さんたちの姿も描かれています。

 

作者の天童荒太さんは、道後温泉のそばで育ったのですよね。

四国に行ったことのない私が、道後温泉と聞いてまず思ったのは、「坊っちゃん」ゆかりの地であるということ。

 

作中、道後温泉ゆかりの文化人のエピソードや句が出てくるのも楽しかったです。

 

秋祭りでの鉢合わせ(大神輿をぶつけ合う)の描写がリアルで、迫力・熱気が伝わってきました。

 

松山の郷土料理である「松山鮓(まつやまずし)」、別名「もぶりずし」についての記述が興味深かったです。

この作品を読んで初めて、まつやまずしの存在を知りました。

 

特徴のあるすし飯に、季節の野菜と瀬戸内の魚を加えて作る、まつやまずし。

 

なんでも正岡子規の好物で、親友である夏目漱石にもごちそうした料理なのだそう。

へぇ~。

  

天童荒太「巡礼の家」裏表紙の鷺の絵

 

こちらが裏表紙の画像になります。

この鳥は、サギですね。

 

三沢厚彦さんという彫刻家の方の絵とのこと。

 

巻末の「謝辞」によりますと、天童荒太さんがお願いして引き受けてもらったそうです。

 

物語のイメージにピッタリ。

素敵なタッチの絵ですよね。

 

天童荒太さんの小説はいくつか読んでいますが、今回は主人公の雛歩が発するダジャレ?

ともとれるような言い間違いが多く登場したのも新鮮でした。 

 

アパレル→パラソル

おあげなさい→お揚げ野菜

マドンナ→ドナドナ

 

等々で、はじめのうちは戸惑ってしまったのですが慣れてくるとクスッとしてしまいます。

 

天童荒太「巡礼の家」背表紙・タイトル

 

最後に

松山市で生まれた正岡子規の句が出てきたり、お遍路さんを迎える文化について触れられていたのが良かったです。

 

お遍路と言えば、先日ラジオのスタッフさんが、四国八十八箇所全てまわったという話をされていました。

 

曰く、何年かかけて巡ったのだとか。

 

徒歩で順番にまわらなければならないのかと思いきや、自転車や自家用車・レンタカー、タクシーやバスでまわったりすることも出来て、なんとツアーもあるそうな!

これは驚きの情報でした。

 

遠いし、実はそれほど興味がなかった四国ですが(←ごめんなさい)、歴史ある湯につかりに行くのもいいかもしれないなと思った次第です。

 

作中に登場した「坊っちゃんカラクリ時計」、「子規記念博物館」も見てみたいですね。

 

もちろん、まつやまずしも食べてみたいです。

私は食いしん坊なので・笑、郷土料理が登場するとなんとなくテンションがあがります。