角田光代「希望という名のアナログ日記」の概要
角田光代「希望という名のアナログ日記」は、2019年11月に小学館より発売されたエッセイ集。
「GINGER」といったファッション雑誌、「すばる」などの文芸雑誌、新聞各社、「UR PRESS」等の刊行物や、大学が発行する文芸誌に掲載されたエッセイをまとめた一冊です。
色々なテイストのエッセイが収録されていまして、大きく3つのカテゴリに分けてあります。
Ⅰ <希望>を書くー21篇
Ⅱ 旅の時間・走るよろこびー12篇
Ⅲ まちの記憶・暮らしのカケラ-17篇
Ⅱの最初は「スケープス(´Scapes)」に収録された短編小説「それぞれのウィーン」が掲載。
全252ページ。
あとがき、つきです。
角田さんの書くエッセイが好きで(もちろん小説も好きです)、書店などで彼女の名前を見かけると手に取るのですが、刊行物等は生活圏内で手に入りにくかったりするものです。
きっと、読んでいないエッセイも数多く存在しているのだと思います。
今回のようなエッセイ集が発売され、彼女の書いた未読の作品を読むことが出来て嬉しい限り。
金沢へ旅行したときに、新幹線の車内にあるフリーペーパー「トランヴェール」にも角田さんの記事が掲載されていた、と記憶しています。
新幹線が好きな私ですが、そう頻繁に乗れるものでもありません。
車内誌の記事もそう読めるものではないので、貴重ですよね。
と思ってちょっと調べてみましたところ、定期購読ができるのだそう!
これには驚きました。
「トランヴェール」はJR東日本が発行しているもので、東日本の文化を感じられる内容となっております。
新幹線を利用する楽しみの一つだったりします。
東北地方の特集が組まれていたりすると、宮城出身の者としては懐かしさでいっぱいに。
小学校の修学旅行では福島県を訪れ、家族旅行では近場の岩手県・山形県を訪れることが多かったので。
新しい取り組みなどの話題もあり、新幹線での時間を豊かにしてくれる存在だなと毎回楽しみにしています。
トランヴェールには、沢木耕太郎さんのエッセイも掲載されていますよね。
おっと、話が脱線してしまいました。
今日の記事は、角田光代さんのエッセイ集「希望という名のアナログ日記」についてです。
角田光代「希望という名のアナログ日記」の感想
今年読んだ角田光代さんのエッセイ集は割とさらーっと読めるものだったのですが、この「希望という名のアナログ日記」は大層読みごたえがあったなという感想を持ちました。
一番はじめに収録されている「<希望>を書く」という章がすごかった。
これは、日経ウーマンに3号に渡って掲載されたもの。
小学生の頃の作文の思い出から、中学、高校時代に考えた進路・将来・進学先のこと。学生時代に作家デビューしたものの、決してとんとん拍子ではなかった作家生活のことなどが綴られています。
作品を世に発表するというのは、批評されたりすることもあるんですよね。
さらりと書いていましたが、これには心が痛みました。
書くことが本当に好きで楽しくて、書くことを続けるのための努力が苦にならない人なんだなという事が伝わってくる内容でした。
結婚、離婚、そして再婚についても触れられていて。(少しびっくり)
そう、彼女が言うように結婚生活にも努力は必要なんですよね。
生活がうまくいくように頑張ろう、という気持ちがないと。
「NOTE」で綴っていた忌野清志郎への愛もすごかったなあ。
角田さんが彼のファンであることは知っていましたが、こうも具体的に述べられていると本物だな、と。
ウィーンに関する短編が1つ収録されていたのも嬉しい。
エッセイ?かと思いきや、物語。これは見事。
ウィーンは、旅好きではない私が訪れたことのある街なんです。また行ってみたいなあ。
「あとがき」に書かれていた上海でのエピソードも面白かったです。
おそらく行くことはないであろう上海の街ですが、そんなことになっていようとは。
暮らし、にかかわる角田さんの鋭い目線、表現の巧みさを楽しめる一冊でした。
最後に
2016年に発売された「坂の途中の家」についてですが、書きたかったのは「言葉のあいまいさ」だったとの記述が気になっています。
その視点で読んだら違った解釈ができるかもしれないな、と再読を考え中です。
今年読んだ角田さんのエッセイ集は、本作で3冊目。
1冊目と2冊目について書いたものが以下の記事です。
どちらもトラベルエッセイでした。
今回のエッセイ集にもトラベルエッセイが含まれていたものの、日常の暮らしに根付いた内容も充実。
個人的には今回のが一番読みごたえがあって、好きです。