真梨幸子「聖地巡礼」について
真梨幸子著「聖地巡礼」は2011年2月に講談社から発売された短編集。
全224ページ。
5つの短編が収録されていて、国内外のパワースポットが登場します。
行ったことがある場所も含まれていて、あそこってパワースポットだったのか、と知ることになりました。(パワースポットにあまり興味がない人です。)
真梨幸子「聖地巡礼」のあらすじと感想
グリーンスリーブス 首かけイチョウ
美弥がかつて羨望の眼差しを向けていた美しいクラスメイトが、同窓会で変わり果てた姿になっていた。
その姿をみた美弥と友人は、高校時代を回顧するー。だが、その元美少女が逮捕された、というあらすじ。
回想シーンと現在が交互に描かれています。
高校時代は友達の存在が大きいですよね。
そして、見た目が気になるお年頃。それ故、嫉妬のような感情も生まれやすいのかもしれません。
同窓会に参加したことがないので、可愛かった子がどうなったのかは知らないのですが、気にしだすと気になります!
日比谷公園には何度か行きましたが、首かけイチョウについては知りませんでした。
カンタベリー・テイルズ カンタベリー大聖堂
ロンドンのヴィクトリア駅で一緒になった4人の日本人。
「カンタベリー物語」にちなんで、一人ずつとっておきの話を披露するという流れになったーというストーリー。
本作唯一の、海外のパワースポットです。
それぞれが語ったのは、生霊の話や妄想癖の話、恐ろしい内容の新聞記事を見て悪夢にうなされる話。
失恋旅行にきたという女性が、始終スナック菓子を食べる様子が滑稽で異様な雰囲気を醸し出していました。
イギリス、行ってみたい。それにしてもホラーなラストだわ。
ドッペルゲンガー 来宮神社
売れっ子芸者の雀から「熱海駅で見かけた」と言われる初音。
しかしその日、ドタキャンされて部屋で寝ていたのだ。
その後も、行っていない場所での初音の目撃情報が寄せられるー。
これって、ドッペルゲンガーってやつでしょうか。
それとも、生霊…?
後半戦のドロドロ劇は、たまらなく嫌な気分にさせられました。
何年か前に訪れたことがある来宮神社。
カップルが、それはもうたくさんいたのを覚えています。
ジョン・ドゥ 井の頭恩賜公園
友人のユカリと井の頭公園へ行くことになった主人公の真由美。
するとユカリは、「時効」だと言って15年前の出来事について語り出したー。
ユカリの妄想もスゴいが、主人公の思い込みも相当だ…。
シップ・オブ・テセウス 西新宿高層ビル群
西新宿を舞台にした、近未来のSF小説です。
登場人物は、少年2人。
SFは苦手意識があって避けていたのですが、短編だと難なく受け入れられますね。
クローンや未知の病が描かれていて、将来、本当に起こりそうな事態だなあ…とも思ったり。
最後に
パワースポット巡り、興味ありますか?
うちの母が割と好きで、神社にある大きな木に触れたり、吉方位の神社に足を運んだりしているようです。
しかしそんなパワースポットも、この作品を読むと見方が変わるような!?
ひょっとしたらある場所を訪れることによって、災いがもたらされる場合もあるのかも…なんてうすら寒いような気分にさえなりました。
短編集なのですが、どことなくリンクしている一冊でした。
ドロドロ具合はそれほどでもありませんでしたが、やはり嫉妬心というのは恐ろしい。
とても面白かったので、機会があったら読んでみて下さい。