まつりパンライフ

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貫井徳郎「邯鄲の島遥かなり・上」のあらすじと感想

貫井徳郎著「邯鄲の島遥かなり」上巻・表紙

貫井徳郎「邯鄲(かんたん)の島遥かなり・上」の登場人物

貫井徳郎著「邯鄲(かんたん)の島遥かなり」上巻は、2021年8月に新潮社から発売された小説。

全617ページ。

初出は「小説新潮」の2015年10月号~2017年8月号。

 

ラジオ&テレビ番組で、中瀬ゆかりさんが激推ししていた本です。

著者渾身の一冊、なのだとか。

 

本作は上巻なのですが、9月に中巻、10月に下巻が発売されるそうです。

「大河小説」との紹介でした。

貫井徳郎さんの小説ですから、それはもう面白いに違いないので、楽しみに手に取りました。

 

では、上巻での主な登場人物の紹介です。

 

イチマツ 一ノ屋松造。福をもたらすと言われる色男。

新吉 第一部の主人公。子供時代は話すことが出来なかった。

平太 イチマツの息子。後に大成。

晋松 イチマツの息子。一ノ屋の後継者となる。

お汀 晋松の幼馴染みだったが…。

松太郎 晋松の長男。

松次郎 晋松の次男。

 

秋子 イチマツの孫。神通力を持つとされる。

容子 イチマツの娘。厄介な「先生」。

小五郎 イチマツの孫。御用金探しに没頭。

鈴子 イチマツの孫。器量よし。

良太郎 イチマツの孫。芸術的な才能がある。

直人 平太の長男。

正人 平太の次男。

圭子 平太の娘。

 

貫井徳郎「邯鄲の島遥かなり・上」のあらすじ

物語の舞台となるのは、神生島(かみおじま)。

神生島生まれのイチマツは美しい顔を持つ、一ノ屋の家系の最後の人物である。

人々は口をそろえて「島に福をもたらす男」だと言い、崇拝している。

 

イチマツは島の女性らと関係を持ち、子が次々に誕生。

しかし彼は特定の相手を娶るでもなく、姿を消してしまう。

 

時は流れー

島では、彼の血を引く者たちが様々な分野で活躍するようになっていた。

 

貫井徳郎「邯鄲の島遥かなり・上」の感想

上巻(第1部~第7部)では、明治から大正にかけての時代が描かれています。

各章、それぞれに語り手がいます。

島での出来事とはいえ、エピソードが独立しているため、全く飽きることなく読み終えました。ここで終わってしまうのか…と、続きが気になって気になって。

 

600ページ以上の分厚い本ですが、中瀬さんのおっしゃる通り一気読みでした。

 

イチマツは、不思議な魅力を持つ男です。

美しい顔を持ち、女性皆に優しい。

同時進行で女性たちと親しくなるも、諍いは起こらない。(なぜ?時代のせい?)

結果、島中にイチマツの子供が生まれることに。

 

面白いのは、彼の子孫たちは「イチマツ痣」と呼ばれる痣が、体のどこかにあらわれるという点。

しかも子はイチマツの顔には似ず、男は平凡、女は不器量な顔ばかりが生まれるのです。

 

貫井徳郎「邯鄲の島遥かなり」上巻・背表紙画像
貫井徳郎「邯鄲の島遥かなり・上」題字

 

かといって、器量よしならば幸せになれるかというと…。

第6部では、美しすぎるがゆえの苦労をしてしまう女性・鈴子が登場。イチマツの血筋でありながら、例外的に美形が生まれたのです。

 

幾人もの人々の半生が描かれています。

芸術的な才能を持つ者、ごく平凡な者、自惚れが過ぎる者、賢い者…。

 

明治~大正の頃にタイムスリップしたかのようでした。

 

まとめ

作中には「くが」という言葉が度々出てくるのですが、漢字をあてると、おそらく「陸」ではないかと思われます。関東大震災の被害も大きかったということから、神尾島は東京近郊の小さな島なのだろうと推察しました。

定期的に船便がやって来るとはいえ、島での暮らしは豊かではありません。漁師の男たちと、干物を作る女たち。

 

文化や教育が「くが」から島に伝わるのは、後のこと。

しかしながら、優秀な人物が誕生したり、医学の道を志す者がいたり、新たな産業を生み出す者がいたりして、島は発展していきます。

 

新選組について触れられている箇所があり、歴史がさっぱりダメな私でも、興味深く読むことが出来ました。高校時代に、こんな描き方をしてくれている本にめぐりあっていたかった。