伊坂幸太郎「死神の浮力」の登場人物
伊坂幸太郎著「死神の浮力」は、2013年7月に文藝春秋から発売された小説。
全436ページ。
前作の「死神の精度」と並行して読みました。そちらは短編集でしたが、「死神の浮力」は長編作品。
長編には長編の魅力がありますね。
他者(人間)からの死神・千葉の姿もまた楽し◎
どちらの作品も、とてもとても面白かったです。
では、主な登場人物の紹介です。
千葉 死神。
山野辺遼 小説家。35歳。
山野辺美樹 遼の妻。34歳。
本城崇 無職の男性。
箕輪 週刊誌の記者。
香川実夕子 死神。
轟貢 リストラ→引きこもりの男性。
小木沼 配達員。
伊坂幸太郎「死神の浮力」のあらすじ
小説家の山野辺遼は、一人娘の菜摘を亡くした。
近所に住む男(本城)に殺されたのだが、彼には無罪の判決が下される。
復讐を実行しようとする山野辺夫妻。
そこへ、千葉が現れて行動を共にすることになる。
死神である千葉が「可」と報告すれば一週間後に死ぬことになるのだが、今回の対象者はー。
伊坂幸太郎「死神の浮力」の感想
前作の短編集では、全て死神(千葉)からの視点で人間を描く作品だったのですが、今回はそうではなく。
千葉の仕事は、担当となった人間の死を見届けること。
一週間、担当者のそばで過ごし「可」か「見送り」かの判断を下すのです。(大抵は可。)
仕事の都合にあわせ、千葉の姿が変わります。
今回は「30代半ばの男性」の格好で、自転車に乗って登場。
この自転車、後にいい仕事をするんです。
あのシーン、好きだなあ。
電動の自転車が欲しかったのだけれど、千葉さんを見習ってもう少し人力で頑張ろう!と気合が入りました。(彼は人間ではないけれどね。)
私としては、サイコパスである本城崇の登場がインパクト大でした。
サイコパスの特徴として挙げられるのは、良心をもたない、平気で噓をつく、利己的、弱みにつけこみ支配しようとする、などです。
彼のような人物が、普通の顔して普通に生活しているのだろうと考えると、こわい。
職場にいたら、たまったものではありません。
千葉が、同業者と会話するシーンも面白かった。
つまり、死神同士の会話ということなのですが。
あちらの業界でも「還元キャンペーン」とかがあるのね・笑。
山野辺夫妻のやりとりから、ほうほう、千葉という男ははたから見るとこう映っているのだな、と。
千葉は真面目な顔して(というか本人は真面目のつもり)、へんてこりんな返しをしてくるんです。
山野辺は、父と交わした言葉を反芻し、考察をめぐらせます。
彼の父は闘病の末に亡くなってしまうのですが、死ぬ間際に思っていたことを、息子に話すのです。
家族との時間よりも、仕事を優先するに至った経緯をー。
単に仕事が楽しかったから、ではなかったのです。
なんかもう泣けてくるじゃないか、この話。
もう、伊坂さんたら!
さて、今回の対象人物。
千葉が「見送り」とすれば死を免れることになるのですが、果たして結論はー。
山野辺夫妻の敵討ちは、うまくいったのかー。
まとめ
参勤交代に3回同行した、と平然と言ってのける千葉。
仕事中は雨に降られる。
電波に乗った音声(携帯電話等)を聞き取ることが出来る。
痛みも疲れも味も感じない。
本人は至って真面目だけれど、ズレている。
渋滞が嫌いで音楽が好き。
素手で触れると、相手が気を失ってしまう。
感情がないとされるのだけれど、エピローグを読むと、そうでもないんじゃない?と思った次第。
2016年7月に、文春文庫から文庫版が発売されたようです。