黒川博行「悪逆」について
黒川博行著「悪逆」は、2023年10月に朝日新聞出版から発売された小説。
全579ページ。初出は「週刊朝日」 2021年11月12日号~2023年3月3日号。
はじめの頁に主な登場人物の紹介があるのですが、あまりの多さにたまげました。
警察小説って、捜査員や周辺の人物が次から次へと出てくる場合が多いですよね。毎回メモを取りながら読み進めるようにしているのですが、こうしてあらかじめ書かれていると助かります。
数えてみたら、大阪府警察本部だけで14名。そしてその他の署、他県の警察署、被害者やら何やらが29名。ふぅー。
それはさておき、この本、とても面白かったのでぜひ紹介させて下さい。
分厚いのに、一気読みでした。
黒川博行「悪逆」のあらすじと感想
広告代理店の元経営者・大迫健司(58歳)が自宅で射殺された。
現場検証から、これはプロの犯行による殺人ーと大阪府警が捜査を進める中、大迫と接点のあった男が殺された。強盗殺人である。
捜査員らは2つの事件は別の犯人によるもの、と見立てた。
そして、3つ目の事件が起きてしまう。今回は新興宗教の幹部が殺されたー。
というのが、ざっとしたあらすじです。
犯人側からの視点、捜査員側からの視点、両方から描かれています。
緻密に練られた計画、計算しつくされた犯行。ここまで完璧に証拠を消すとなれば、完全犯罪も成しえるのでは…?と思ってしまうほど、犯人は知識がある人物。
残忍な犯行を重ねていながらも、落ち着きはらっている犯人が気味悪く感じました。なにもかも、こなれているんだよなあ…という謎も、途中で解けます。
隠し財産を、そんなところに…!という場面も面白かったです。
捜査員であるベテラン刑事の玉川と、相棒の舘野(たーやん)との掛け合いが絶妙。
事件が次々と起こる一方、この2人のやりとりが、どこかちぐはぐで。
マルチ商法、カルト宗教、詐欺、資産隠し、偽装倒産、密輸、などなど闇社会の悪がギュッと詰まった一冊でした。
被害者3人は皆悪党なのですが、その周りまでも、嘘つきばっかり!
物語はフィクションなのですが、詐欺関連のニュースを見聞きするたびに悪い奴って本当に存在するんだなとヒヤッとした気持ちになります。
狭い世界で暮らしていると、どこか他人事のような気になってしまうもの。
そんな私ですが、今月はクレジットカードのトラブル(不正利用)に巻き込まれました。
これを読んでいる方も、どうかお気を付けください。
利用明細は、必ず確認しましょう。
その他
その他、今月読んだ本の記録です。
村井理子さんの「兄の終い」。
かねてより読んでみたかった、村井さんの本。
さて、どれにしよう?と本棚の前で悩む私。
目次の「宮城県ー」の文字が目に留まり、これに決めました。(宮城県出身なので、ご縁を感じた。)
それが「兄の終い」というタイトルの本でした。
2019年の10月に亡くなった、彼女のお兄さん。
健康体ではなかったようですが、54歳で突然亡くなってしまうって早いなあと思いました。諸々の手続きや住まいの後片付けをしたのは、妹である村井さんと元妻。
本の帯に「憎かった兄」という文字があったので、どんな人だったのだろうかと興味津々で読みました。
た、たしかに村井さんの立場だったら絶縁してしまうかもしれない。
ジメっとした感じにならず、まとまっているところは、さすがプロ。
人が死んだあとって、結構お金がかかるんですね。
このお兄さんの場合は、住んでいたアパートがゴミ屋敷のような状態になっていたために費用がかさんだわけなのですが。
村井さんは宮城県にゆかりがあったわけでもないので、何故お兄さんが多賀城で暮らすことになったのかは不明でした。