ファン・ボルム著「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」について
ファン・ボルム著「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」牧野美加 訳は、2023年9月に集英社から発売された小説。全364ページ。
何年かぶりに、翻訳本を読み切りました。
本は日常的に読んでいますが私の場合、読むジャンルが狭いんです。
エンタメ系の小説か、エッセイばかり。
純文学とノンフィクションを、ときどき。
これまで、翻訳本を手にとっては挫折…ということを繰り返してきた私ですが、本作はするすると物語が入ってきました。
おまけに、映像までもが頭の中に広がる感じ。
この本を手に取ろうと思ったきっかけは、書店の目立つところに陳列されていたから。
「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」は、2024年・本屋大賞(翻訳小説部門)の受賞作なのです。
「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」のあらすじ・感想
簡単にあらすじを説明しますと、本を読むのが大好きなヨンジュという30代の女性が営む「ヒュナム洞書店」をめぐる小説です。書店にはカフェが併設されています。
登場人物はヨンジュの他に、バリスタとして雇われた青年ミンジュン。コーヒー豆の焙煎をしているジミ(業者さん)、高校生であるミンチョルとその母親(書店の常連客)、その他ヒュナム洞書店に通ってくる人々、といった感じです。
目次をみると、短編集なのかな?というくらい、たくさんの見出しがついているのですが、ひとつの物語です。
主人公は、ヒュナム洞書店の店主であるヨンジュ。ではあるのですが、登場人物それぞれの視点でも描かれていたりするので、いわゆる群像劇というやつですね。
店の開業までのあれこれ、本の仕入れ、書店の経営、ちょっと困ったお客さんへの対応やイベントの企画など、知らなかった本屋の側面も面白かった。
そしてヨンジュの、読書との向き合い方が素敵なんですよ。
これは、今後の参考にしたいと思いました。
例えば彼女は、ある期間に読んできた小説を分類し、そこから自分の精神状態を見つめ直して分析したりしているのです。
どんな小説を読んで面白いと感じたか、までは私も記録しているのですが、ヨンジュのように自分の状態を顧みるところまではしていませんでした。
それとこの本では、他者との距離感がちょうど良い感じで描かれているのも良かったです。
一定の距離を保ちながらの付き合い方って、時に難しかったりもしますが。
海外文学でよくあるのが、人物たちの名前が覚えられないという問題(私だけ?)。
これは、韓ドラを見ているおかげでしょうか、楽々クリア・笑。10名くらいの登場人物が出てくるのですが、メモをとらなくても大丈夫でした。
後半で明かされる、ヨンジュの過去や登場人物たちの葛藤。韓ドラのように、大きな事件が起こったりするわけではないのですが、引き込まれました。
登場人物が皆、優しい人たちばかり。
こちらまで、なんとなく優しい気持ちになるような。
そんな素敵な一冊でした。
韓国の小説は重いテーマを扱っている、という印象が強かったのですが、本作は読後も爽やかですし今までのイメージが大きく変わりました。
最後に
「〇〇賞受賞」といったポップを参考に本を選んでも、今の自分には今ひとつハマらないな、という場合があったりしませんか?
この本は見事にハマりました。
これを機に、翻訳小説をもっと読んでいきたいなと考えています。
どうしても苦手なのが、歴史小説…。
昔から、どういうわけか歴史が全く頭に入らないのです。
時代小説の中は宮部みゆきさん以外の作品を読み切ったためしがないので、他の作家さんのも読んでみたいのですが。
それにしても、暑いですね。
寝不足の状態で外出すると、ぶっ倒れてしまいそうなほど危険な暑さです。
自宅で読書、が一番平和◎