まつりパンライフ

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白石一文「君がいないと小説は書けない」のあらすじと感想

白石一文著「君がいないと小説は書けない」の表紙

 

白石一文「君がいないと小説は書けない」について

白石一文著「君がいないと小説は書けない」は2020年1月に新潮社から発売された長編小説。

 

初出は「小説新潮」2017年9月号~2019年3月号。

全443ページ。

 

中瀬ゆかりさんが、ラジオ内で推薦されていたのが本作品を知るきっかけとなりました。

いざ読んでみると、これがまあ期待以上の面白さで引き込まれました。

長編で、読みごたえアリです。

 

忘れないうちに今回の思いを、記事として残しておきたいと思います。

 

主な登場人物は、以下の通りです。

 

野々村保古 主人公・作家。元編集者。

ことり 保古のパートナーの女性。

 

りく 前妻。

新平 前妻との息子。

 

その他、作家仲間やかつての同僚・上司など、付き合いのあった人物たちが登場します。

 

白石一文「君がいないと小説は書けない」中身

 

白石一文「君がいないと小説は書けない」のあらすじ

主人公の野々村保古は、元編集者。

40歳で作家デビューし、今年で作家生活20年。

 

保古の現在のパートナーの女性は「ことり」。

彼女と4匹の猫と共に東京を離れ、地方都市に暮らしている。

 

保古は38歳のときに妻と中学生の息子を置いて家を出たものの、妻との離婚は成立していないー。

 

ことりの母が倒れたことで、やむなく別居生活を送ることになるがーというあらすじ。

 

出版業界や作家として生きていくことを描いた、自伝的小説。

 

白石一文「君がいないと小説は書けない」の感想

「君がいないと小説は書けない」というタイトル通り、事実婚のパートナー・ことりがいなければ、保古は小説を書くことはできないのだ、ということがわかりました。

そして、表紙の写真が腑に落ちました。

 

この本の概要を耳にしたとき、失礼ながら無責任な主人公だなと思ったのですが、読み終えてみるとそう単純な話ではなかったのです。恥ずかしくなりました。

 

保古なりに懸命に向き合ったし、責任も十分に果たしたと言っていいのではないか…と、読む前とは反対の感想

 

ことりの変わった趣味には、驚かされました。

私の周りには存在しませんが、あんな変わった趣味の人っていますか?

 

白石一文「君がいないと小説は書けない」の背表紙画像

 

編集者時代のエピソードが、リアルでした。

 

それはそうですよね、実際に白石さんは編集者として働いていたわけですから。

自分の目でみたこと・感じたことを、彼なりの視点で見事にまとめ上げています。

 

はっきりと明記されてはいませんが、かつて勤務していた出版社はあのA賞やN賞を主催しているところだそう。いくつかの事案は事実だろうという感じがします。

 

作家と編集者の関係性についても触れられており(曰く、相性が大事だそう)、興味深かったです。

「穴があったら入りたいエピソード」のくだりでは、つい笑いそうになってしまいました。

 

白石一文・長編小説「君がいないと小説は書けない」中扉

 

身近な人の「死」からの考察にはハッとさせられるものがありました。

そこまで考えてみたことはなかったけど確かにそうかも、と読み返したほど。

 

ときに、哲学の教科書を読んでいるような(?)錯覚に陥りました。

 

男と女の考え方の違いについて(女性は買い物が好きな傾向にあるとか)、どのようなプロセスを辿ってそうなったのか?が、なるほどなあと。

説得力があり、興味深い掘り下げ方でした。

 

「結果、こうなった」というのには何か理由があるはずだと自分なりの答えを出しているところも魅力的でした。

私自身はどうかな?と考えてみて…そうだ、と感じたりそれは違うかな、と感じたり様々でしたが、いずれにしてもどのように考えてその答えに行き着いたのかを読むことは非常に有意義な時間でした。

 

問いかけをされているような気にもなり、その都度考えてみることは面白い作業でした。本に書き込みをするのは好きではないため、結果、付箋だらけに…。

 

最後に

白石一文さんの作品は、今回初めて拝読しました。

書店で彼の名前を見かける事はあったのですが、なかなか手に取る機会がありませんで…。

 

ご自身も直木賞を受賞されていて、お父さんも直木賞作家って凄いですよね。

具体例や説明がわかりやすく、何度「巧いなあ…!」と思ったことか。

 

出版社の裏側が、少しだけ垣間見られたようでした。

 

中瀬親方、素敵な本を紹介してくれてありがとう。

ぶた村ステッカーは今のところ要りませんが(←わかる人、いますか?)、これからも木曜日の「ブックソムリエ」の放送を楽しみにしています。